商談の議事録の書き方:項目を4つに絞って分かったこと
2026年9月10日

商談の議事録に何を書くか。調べると、項目の一覧とフォーマットが出てきます。どれも間違っていません。ただ、実務で詰まるのは「何を書くか」ではなく「埋まらない欄をどうするか」です。
この記事では、まず一般論を短く済ませます。そのあとに、自分たちが議事録の標準項目を4つに絞ったときの話を書きます。何を落としたか、なぜ落としたかを、実際に動いているコードの中身つきで載せます。
挙がる項目は、だいたい7つ前後
先に一般論です。商談議事録の項目としてよく挙がるのは、この並びです。参加者の情報、商談の基本内容、決定事項、議論事項、保留事項、次のアクション、次回の日程(出典)。
書き方のコツとして、5W1Hを意識する、簡潔にまとめる、といった案内も並びます。これも正しいです。議事録は読み返すために書くもので、読み返せない議事録に価値はありません。
一般論はここまでで足ります。
詰まるのは、項目が思いつかないときではない
詰まるのは、欄はあるのに書くことが無いときです。
商談は、何も決まらないまま終わることがあります。予算の話まで進まなかった、担当者が持ち帰った、次回の日程は「また連絡します」で終わった。このとき、決定事項の欄も、次回の日程の欄も空になります。
ここで道が2つに分かれます。
- 空欄のまま出す … 読む側には「書き漏れ」に見える
- それらしく埋める … 言っていないことが記録に残る
危ないのは2つ目です。議事録は、あとで「言った・言わない」を確かめるために開かれます。そこに、その場で出ていない金額や期限が入っていると、確かめる道具が確かめられない道具に変わります。
そして、この2つ目はAIに書かせると起きやすくなります。空の見出しを渡されたAIは、埋めようとするからです。
標準は4項目にした
自分たちのツールでは、議事録の見出しをこの4つにしています。コードにそのまま書いてある文字列です。
## 概要
## 決定事項
## ToDo(分かれば担当・期限も)
## 要点・論点
一般に挙がる項目より少ないです。落としたものと、その理由を1つずつ書きます。
日時を落とした。 日時は機械が知っています。議事録の末尾に 作成: Meetnect / 2026/09/10 17:30 という1行を、AIではなくプログラムが付けます。AIに書かせると、会話の中に出てきた「来月の20日」のような日付を拾って、実施日として書いてしまう余地が生まれます。確実に分かっていることを、推測できる相手に渡す理由がありません。
参加者を落とした。 参加者は文字起こしの中に残ります。自分たちは参加者ごとに音声を別々に録っていて、文字起こしが 名前:発言 の形で並びます(その仕組みは別記事に書きました)。名簿はそこから読めるので、AIに作り直させる必要がありません。
議題を落とした。 これがいちばん迷いました。落とした理由は、商談では事前に決めた議題と、実際に話した内容がずれるからです。ずれたとき、議題欄は「予定していたこと」を書く欄になります。3か月後に読み返す人が知りたいのは予定ではなく、実際に何の話をしたかです。それは概要が持ちます。
保留事項と次回日程を落とした。 保留は決定事項に、次回日程はToDoに吸収されます。分けて持つ価値より、埋まらない欄が2つ増える不利のほうが大きいと判断しました。
空欄は、埋めさせずに「読み取れませんでした」と書かせる
項目を減らしても、埋まらない欄はゼロにはなりません。そこで、AIへの指示にこの一文を入れています。
> 会話が乏しく議事録にできる情報が無い項目には「(今回の会話からは読み取れませんでした)」と書き、内容をでっち上げないこと。
読む側にとって、空欄とこの一行は意味が違います。空欄は「書き忘れたのかもしれない」ですが、この一行は「今回は決まらなかった」と読めます。商談の記録として正しいのは後者です。何も決まらなかったという事実は、記録する価値のある事実です。
そして、この仕組みは項目を増やしにくくする理由にもなっています。項目を1つ足すたびに、この一行が出る確率が上がります。 一行が3つ4つ並ぶ議事録は、読むのをやめられます。
ToDoに「必ず担当と期限を書け」とは書いていない
見出しは ## ToDo(分かれば担当・期限も) です。「分かれば」と入れてあります。
5W1Hを必須にすると、言われていない担当者名と期限が入ります。相手が「来週あたりに社内で見てみます」としか言っていないものを、「9月17日までに先方担当が確認」と書かれたら、その日付が独り歩きします。翌週、その日付を根拠に催促の連絡をして、話がこじれる。
分かれば書く、分からなければ書かない。 議事録に書いてある期限は、会話の中で口に出された期限だけであってほしいからです。期限を決めるのは議事録の仕事ではなく、商談の仕事です。
会話が40字に満たないときは、議事録を作らない
もう1つ、項目とは別の歯止めがあります。文字起こしが40字に満たないときは、そもそも議事録を作りません。 代わりに「(会話が短いため、議事録を作成できませんでした)」という一行を返します。
材料が無いときが、いちばんでっち上げが起きます。接続の確認で10秒だけ繋いだ、相手が入る前に切った。そういうときに、それらしい議事録が1本できてしまうほうが困ります。中身が無いことを、中身が無いと返せるようにしてあります。
長い商談でも、拾う単位は同じ4つ

2時間の商談だと、文字起こしが長くなります。14,000字を超えたら、一度に渡さずに区間で割ります。区間ごとに決定事項・ToDo・重要な発言・論点だけを抜き出し、それを統合して最終的な4項目に戻します。
抜き出す対象が、そのまま標準の4項目に対応しています。ここで項目の少なさが効きます。抜く対象が少ないほど、区間をまたいだ統合で取りこぼしにくい。 項目が10個あると、区間ごとに10個の欄を抜き、統合でもう一度10個に整える必要が出て、後半の情報が落ちやすくなります。
落とした項目は、消えたわけではない
ここが前提です。自分たちの議事録は、4項目で終わりません。その下に ## 文字起こし(全文) が付き、名前:発言 の形で会話がまるごと残ります。
だから議事録の上半分を4項目まで削れます。上を薄くできるのは、下に全部あるからです。
逆のことも言えます。全文が残らない運用なら、議事録の項目は増やすべきです。 その場合、議事録が唯一の記録になるので、保留事項も次回日程も、書いておかないと消えます。何を書くかは、どこまで残っているかとセットで決まります。 項目の一覧だけを他所から持ってきても合わないのは、この前提が違うからです。
まとめ
商談の議事録で決めるべきことを5つに整理します。
- 埋まらない欄を作らない。 欄の数は、書ける保証がある数まで
- 埋まらなかったことは、空欄ではなく一文で残す。 「決まらなかった」も記録
- 機械が知っていること(日時・参加者)は、AIに書かせない
- 担当と期限は、口に出されたものだけ書く
- 上を薄くするなら、下に全文を残す。 セットで決める
項目を増やすと、丁寧な議事録になった気がします。実際に増えるのは、埋まらない欄と、埋めるために盛られた欄です。
Meetnect はブラウザだけで動くオンライン商談ツールです。この記事の4項目・40字・14,000字は、実際に動いているコードの値です。参加者ごとに音声を分けて録っているので、商談を抜けた時点で、4項目の議事録と、誰の発言かが入った文字起こし全文が1つのファイルになって残ります。