商談の議事録の保存期間はいつまでか|消える日を決めているもの
2026年9月27日

商談の議事録を何年残すか決めようとして調べると、10年や5年という数字が出てきます。その数字は、商談の議事録の話ではありません。 株主総会や取締役会の議事録に法律で決まっている年数で、別の書類です。では商談の議事録は何年なのか。そして年数を決めたあと、何が起きるのか。法令と各サービスの公式ヘルプで確かめ、出典を本文に置きました。先に結論を書くと、社内で決めた年数と、ファイルが実際に消える日は、たいてい一致していません。
検索で出てくる「10年」は、別の書類の話
「議事録 保存期間」で検索すると、上位は法定の議事録で埋まります。株主総会議事録、取締役会議事録、社員総会議事録。数字の出どころは会社法です。
> 株式会社は、株主総会の日から十年間、前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。
(会社法第318条第2項)同じ条の第3項では、支店に置く写しが5年になっています。
帳簿のほうにも年数があります。国税庁は、法人は確定申告書の提出期限の翌日から7年間、帳簿と書類を保存すると案内しています。欠損金が生じた事業年度は10年です(No.5930 帳簿書類等の保存期間)。ただしそこに並ぶ書類の例は「棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書など」で、商談の議事録は挙がっていません。
つまり、商談の議事録に「何年」と言っている法律は見つかりません。上位の記事が間違っているのではなく、問いと答えが別の書類の話になっているだけです。
では商談の議事録は何年にするのか
手がかりは法定の保存義務ではなく、後から要るかどうかです。使い道は実質2つです。社内で見返すときと、言った言わないの争いになったときです。
争いのほうには目安があります。民法166条1項です。
> 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
(民法第166条)
取引から生まれる債権は、ふつう「行使できることを知っている」側に入るので、5年のほうが先に来ます。議事録を証拠として使う場面は、この5年の内側にあります。 7年や10年をそのまま商談の議事録に当てはめると、根拠のないまま長くなります。
「ずっと残す」は、決めたことにならない
長いほうが安全に見えますが、個人情報が入っている記録は逆です。商談の議事録には相手の氏名・所属・連絡先が入るので、個人データです。個人情報保護委員会は、廃棄の時期についてこう書いています。
> 個人情報保護法では、個人情報の保存期間や廃棄時期について具体的に規定していません。
そのうえで、法22条に基づき「利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければなりません」としています(取得した個人情報は、いつ廃棄しなければなりませんか。)。
下限を決める法律は無く、上限側に努力義務がある。 これが商談の議事録の置かれている形です。「念のため全部残す」は、この努力義務とは逆を向きます。年数を決めるというのは、消す日を決めるということです。
Teams:120日で消える。設定を変えても過去には戻らない
ここからが、上位10件に書かれていなかった部分です。社内で年数を決めても、ファイルが実際に消える日は、記録を置いているサービスの既定値が決めています。
Teams は、会議の録画と文字起こしに既定で期限があります。
> 会議のレコーディングと文字起こしの有効期限は既定で 120 日です。
値は1日から99999日まで設定でき、PowerShell で -1 を指定すると期限なしにできます。期限が来ると OneDrive か SharePoint のごみ箱へ移り、職場または学校のアカウントなら、管理者が設定を変えていない限り、ごみ箱で93日後に自動削除されます。
問題は次の一文です。
> この設定に対する変更は、新しく作成されたレコーディングと文字起こしにのみ影響します。既存の会議のレコーディングと文字起こしの有効期限を変更することはできません。
社内規程を作った日より前の記録は、その規程の年数になりません。 5年と決めても、半年前の商談の録画は120日で消えています。規程を書く日と、設定を変える日の順番が、そのまま残るものを決めます。
Zoom:消した後に30日ある
Zoom のクラウドレコーディングには、作成日から指定した日数で削除する設定があります。そして削除は一段階ではありません。
> deleted cloud recordings will be kept in the trash for 30 days
ごみ箱にある間は、容量にも数えられません。
> These files will not count as part of the total storage allowance
(Managing cloud recording settings)
これは両方向に効きます。消したつもりの記録が30日残っているのと、容量を空けたつもりで空いていないのは、同じ仕組みの表と裏です。「削除しました」と社内に報告する日と、実際に消える日が30日ずれます。
Google Meet:期限は無い。誰かが消すまで残る
Meet は作りが違います。
> 録画は、会議の主催者の Google ドライブの「Google Meet」フォルダに保存されます。
(ビデオ会議を録画する)このヘルプに、有効期限や自動削除の記述はありません。 ドライブの中の普通のファイルなので、誰かが消すまで残ります。
安心に見えますが、さきほどの努力義務はここに効きます。しかも置き場所が「主催者のドライブ」なので、担当者ごとにファイルが散ります。会社として何年と決めても、消す作業は各自のドライブの中で起きます。期限が無いというのは、期限を誰も持っていないということです。
決めるのは年数ではなく「どこに、何日」

三者を並べると、同じ「保存期間」という言葉が三通りの意味になっています。Teams は放っておくと消える。Zoom は消してからもう一段ある。Meet は消えない。社内規程に「5年」とだけ書いても、このどれにも届きません。
決めるなら、3つをひと組にします。
- 何年にするか(証拠として要る期間。多くの商談は5年より短くて足ります)
- どこに置くか(そのサービスの既定値は何日か。Teams なら120日)
- すでにあるファイルはどうなるか(設定を変えても遡らないことがあります)
抜けやすいのは3つ目です。規程を書き終えた時点で、過去の記録は古い設定のまま動いています。決めた日に、過去のぶんを別に数えておくのが確実です。
Meetnect では、録画と議事録の置き場所を、会社が自分で選んだ Google ドライブのフォルダにしています(管理画面の「録画の保存先」でフォルダを指定する作りです)。データベースに持っているのは保存先のリンクと名前だけで(rooms テーブルの minutes_link など)、本文はこちらに置いていません。理由はこの記事のとおりで、消える日をこちらの既定値で決めると、会社が決めた年数と必ずずれるからです。 残す年数も消す日も、記録を持っている側が持つほうが素直だと考えました。