トップ / ブログ

オンライン商談のクロージングは、「はい」の中身を言葉で決めて終える

2026年9月21日

相手の「お願いします」が、発注・社内に上げる・見積依頼の3つのどれなのかを分けて聞く、という考え方
相手の「お願いします」が、発注・社内に上げる・見積依頼の3つのどれなのかを分けて聞く、という考え方

オンライン商談のクロージングの言い方を調べると、テストクロージング、二者択一、次回アクションの確認、といったテクニックが並びます。どれもそのまま使えます。ただ、実際に詰まるのはそこではありません。画面越しに「じゃあ、お願いします」と返ってきて、こちらは決まったと思って終えたのに、翌週「社内で確認してからになります」と戻ってくる。この記事では、その原因を「はい」が何への返事なのかが決まっていないことに置き、契約の成立を定めた民法の条文を一次情報として、言い方の形を組み立てます。


この記事の内容
  1. よく挙がる言い方は、対面と同じもの
  2. 「お願いします」が、何への返事か分からない
  3. 契約は、内容を示した申込みと承諾で成立する
  4. 何への「はい」なのかを、3つに分けて聞く
  5. チャットに書いたものは、会議と一緒に消えることがある
  6. 最後に

よく挙がる言い方は、対面と同じもの

先に一般論です。クロージングの言い方として紹介されているのは、だいたい次のものです。「もし導入するとしたら、どちらのプランになりそうですか」と仮定で聞くテストクロージング。「AとB、どちらが合いそうですか」の二者択一。その場で決まらないなら「いつ・誰が・何を」を決めて終える次回アクションの確認(例1・例2・例3)。

オンライン向けの注意としては、一文を短くして話の終わりを分かりやすくする、要点をまとめた資料を先に送っておく、といったものが添えられています。どれも間違っていません。一般論はここまでで足ります。

「お願いします」が、何への返事か分からない

オンラインで起きるのは、言い方が下手で断られることより、決まったように見えて決まっていないことです。3つの形があります。

1つ目。「お願いします」が、発注なのか、社内に上げることなのか、見積の依頼なのかが分からない。 対面なら、机の上に見積書があって、相手がそれを手に取るかどうかで温度が見えます。画面越しだと、資料は共有画面に映っているだけで、相手の手元には何もありません。その状態で出る「お願いします」は、「進めてください」にも「検討の材料をください」にも聞こえます。

2つ目。合意の中身が、言葉になっていない。 商談の途中で金額を2案出し、数量の話が行き来し、開始時期は「来月か再来月」で止まっている。最後に「では、この方向で」とまとまったとき、どの金額・どの数量・いつからなのかが、双方の頭の中で違ったままです。

3つ目。画面のチャットに書けば残ると思っている。 金額や期日をその場でチャットに打って「これで合意ですね」と確かめるやり方があります。ところが、ツールによってはそのチャットが会議の終了と同時に消えます。

3つとも、テクニックの問題ではありません。何が決まったのかを、言葉で確定させずに終えていることが原因です。

契約は、内容を示した申込みと承諾で成立する

ここで一次情報を1つ置きます。契約がいつ成立するかは、民法の第522条に書かれています(民法(e-Gov 法令検索) 第522条)。条文はこうです。

> 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。 > > 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

営業の側から読むと、2つのことが書いてあります。

1つ目。申込みとは、契約の内容を示して申し入れる意思表示だということ。内容を示していなければ、それは申込みではなく、相手の「はい」も承諾ではありません。前の章の2つ目(合意の中身が言葉になっていない)は、この意味で「まだ何も申し込んでいない」状態です。

2つ目。契約の成立に、原則として書面は要らないということ。口頭でも成立します。これは営業側に都合がいい話に見えますが、逆から見ると、相手にとっては画面越しの「お願いします」ひとつで契約が成立しうるということです。相手がそれを分かっているほど、その場では言葉を濁します。「社内で確認します」に戻るのは、相手が慎重なのではなく、条文どおりの反応です。

なお、ここに書いたのは条文の引用と、それを営業の言い方に当てはめた読み方です。個別の取引で契約がどう扱われるかは、条件によって変わります。

何への「はい」なのかを、3つに分けて聞く

条文を裏返すと、言い方の形が決まります。内容を示してから、何への返事なのかを分けて聞く。

相手の「はい」には3段階あります。

クロージングでは、この3つのどれを聞いているのかを、こちらから明示します。「こちらで進めてよろしいでしょうか」と1つの問いにまとめると、相手は答えやすいほうを選び、その答えが3つのどれなのかは残りません。

代わりに、内容を先に置いてから段階を聞きます。「Bプラン、月額○○円、10アカウント、来月1日開始。この内容で、今日この場で決めていただけますか。それとも、この内容で社内に上げていただく形ですか」。相手が「社内に上げます」と答えたら、決裁者と期日を聞いて終えます。「決めます」と答えたら、それは条文の意味での承諾なので、こちらも同じ内容をその場で復唱します。

クロージングの「はい」を、発注・社内に上げる・見積依頼の3段階に分けて、内容を示してから聞く流れ
クロージングの「はい」を、発注・社内に上げる・見積依頼の3段階に分けて、内容を示してから聞く流れ

この聞き方は、成約率を上げるためのものではありません。決まっていないものを決まったことにしないためのものです。効果を数字で測ったものでもありません。条文から素直に導ける形として書いています。

チャットに書いたものは、会議と一緒に消えることがある

3つ目の詰まり(チャットに書けば残る)についても、一次情報を置きます。Google Meetのヘルプは、会議中のチャットについてこう書いています(Google Meet ヘルプ)。メッセージの保持機能が無効なら「メッセージは会議中にのみ表示され、会議が終了するとすぐに消えます」。外部ゲストについては「会議が終了するとチャット履歴が消去され、会議中にのみメッセージにアクセスできます」。録画すればチャットの会話ログも保存される、とも書かれています。

商談の相手は、ほとんどの場合、外部ゲストです。つまり、こちらが金額をチャットに打って相手が「はい」と返しても、相手の手元にはそのやり取りが残りません。こちらの手元に残るかどうかも、設定次第です。

なので、合意した内容は会議の中で残そうとせず、終わった直後にメールで送るのが確実です。送る中身は前の章の3段階のどれだったかと、示した内容(金額・数量・開始日)。「本日は、この内容で社内に上げていただく、というところまででした」と、決まった段階を決まった段階のまま書きます。ここで「ご発注ありがとうございます」と一段上げて書くと、相手の側では話が違うことになります。

最後に

私たちはMeetnect(ミートネクト)というオンライン商談ツールを作っています。この記事に書いたことは、ツールで解決する話ではありません。何への「はい」かを分けて聞くのは人の側の仕事で、条文は道具を替えても変わらないからです。ツール側でできるのは、その場で言った内容を後から読み返せるようにしておくことで、商談が終わると議事録が出ます。お礼メールには、その中の決定事項とToDoだけを貼っています(商談後のお礼メールに議事録をどう添えるか)。何への「はい」で終わったかを、送る前にもう一度そこで確かめられます。

商談しながら、議事録ができています

Meetnect はブラウザだけで動くオンライン商談ツールです。相手は登録不要、URLを開くだけ。通話中に文字起こしが進み、終わった時点で「誰が何を言ったか」まで残った議事録ができています。7日間、カード登録なしで試せます。