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日本語の商談を文字起こししたら、意味の通らない文章が出てきた。原因は設定ひとつだった

2026年8月29日

崩れた文字起こしが、言語設定ひとつで整った議事録になる
崩れた文字起こしが、言語設定ひとつで整った議事録になる

商談を録音して、AIに文字起こしさせる。そこまでは簡単に動きます。問題はそのあとで、出てきた日本語が読めないことがあります。

この記事では、実際に出てきた壊れた文字起こしと、その原因、直したあとの結果を、測った数字とともに載せます。文字起こしの精度が出ないとき、モデルを変える前に確認すべきことが1つあります。


この記事の内容
  1. 出てきたのは、日本語のようで日本語でない文章だった
  2. 原因は「何語かを指定していなかった」こと
  3. モデルの選択でも差が出る
  4. 音声は30秒より短く切る
  5. 商談の文字起こしで、順番に確認すること
  6. 議事録の質は、文字起こしの質より上には行かない

出てきたのは、日本語のようで日本語でない文章だった

商談の音声を文字起こしさせたところ、こういう出力が返ってきました。

おすすいな。なんとこんなおすすいんだ。どうしたらいい?

音声には普通の日本語の会話が入っています。それでもこうなります。

単語の間違いではありません。文として成立していない。 「おすすい」という語は日本語に存在しませんし、話した内容とも一致しません。

こうなると、この文字起こしから議事録を作っても意味がありません。要約するAIが優秀でも、元の文章が壊れていれば、出てくる議事録は空想になります。

原因は「何語かを指定していなかった」こと

使っていたのは Whisper という文字起こしのモデルです。OpenAIが公開しているもので、多くのサービスが内部で使っています。

Whisperには、音声を聞いて言語を自動で推測する機能があります。便利な機能ですが、これが裏目に出ます。

日本語の音声を、別の言語だと誤って判定することがあります。そうなると、その言語として無理やり音を当てはめようとするので、日本語として読めない文字列が出てきます。「おすすいな」は、そうやって生まれた文字列です。

短い発話、雑音の多い環境、話し始めの数秒が無音、といった条件で誤判定は起きやすくなります。商談の録音はまさにその条件に当てはまります。 冒頭は挨拶で声が小さく、オフィスの音が入り、相手の回線を通った音質は劣化しています。

対策は単純で、言語を明示的に「日本語」と伝えることです。推測させない。

language: "ja"

たったこれだけです。これを入れた瞬間、読める日本語が返ってくるようになりました。

モデルの選択でも差が出る

言語指定と合わせて、モデルも見直す価値があります。

Whisperにはいくつか大きさの違うモデルがあります。小さいモデルは速くて安いのですが、日本語は得意ではありません。英語で学習した比重が高く、日本語の敬語や固有名詞で崩れます。

商談の文字起こしなら、大きいモデル(large系)を選ぶ価値があります。速度と費用は上がりますが、元の文章が壊れていたら、後段の要約が何をしても取り返せません。 ここは削るところではありません。

もうひとつ効くのが、文脈を先に渡すことです。多くの実装で、事前のヒントを渡す仕組みがあります。

これは日本語のビジネス商談の会話です。敬語で話しています。

この一文を添えるだけで、モデルの推測が変わります。業界用語や社名のような固有名詞は依然として苦手ですが、文体の崩れは目に見えて減ります。

音声は30秒より短く切る

長い音声はそのまま渡すとエラーになり、25秒ほどに分割すると安定して結果が返る
長い音声はそのまま渡すとエラーになり、25秒ほどに分割すると安定して結果が返る

もう一点、実際にぶつかった落とし穴があります。

45秒の音声を送ったところ、こういうエラーが返ってきました。

3010: Invalid or incomplete input for the model

しかも毎回ではなく、通るときと通らないときがある。断続的に失敗するので、原因が分かりにくい。

Whisperは内部で30秒を1単位として処理する設計になっています。それを超える長さを一度に渡すと、実装によっては扱いきれません。

25秒に短くしたところ、エラーは出なくなりました。副次的な効果もあって、文字起こしが手元に届くのが早くなります。長い塊を待つより、短い単位で次々に処理したほうが、終わったときには大部分が終わっています。

商談の文字起こしで、順番に確認すること

精度が出ないときの確認順を整理します。上から順に、効果が大きく、直すのが簡単な順です。

文字起こしの精度が出ないときに、上から順に確認する5つ
文字起こしの精度が出ないときに、上から順に確認する5つ

1. 言語を指定しているか。 自動判定に任せていないか。これが一番効きます。

2. モデルは日本語に耐えるものか。 小さいモデルを速さで選んでいないか。

3. 文脈を渡しているか。 何の会話なのかを事前に伝えているか。

4. 音声を長く送りすぎていないか。 30秒を超える塊を一度に渡していないか。

5. 無音を送っていないか。 誰も話していない区間を送ると、モデルが何かを聞き取ろうとして、存在しない言葉を出力することがあります。

ここまで確認して、それでも固有名詞が合わないなら、それはモデルの限界です。社名や商品名は、後から置換するほうが確実です。

議事録の質は、文字起こしの質より上には行かない

ここが一番伝えたいところです。

AI議事録の話をするとき、要約の賢さに目が向きがちです。どのAIを使っているか、どんな項目で整理されるか。

でも、要約は元の文章より賢くはなれません。 文字起こしが崩れていれば、要約は崩れた文章を辻褄の合う形にまとめるだけで、それは事実ではなくなります。商談の記録としては、空欄より危険です。

議事録ツールを比べるときは、要約の見た目より、自分の声で、自分の環境で、文字起こしがどう出るかを確かめてください。 静かな部屋で読み上げた音声ではなく、実際の商談に近い条件で。


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