web会議のチャット通知を特定の相手だけ止めたい|残る3つの単位
2026年10月9日

商談の45分だけ、あの人のチャットを黙らせたい。検索すると「そのチャットをミュートする」という手順が出てきます。手順は正しくて、Teams にも Google Chat にもその口はあります。
ただし手順を入れたのに、商談中にまた通知が出る。公式の文面を当たると、理由は止める単位が3つずれていることでした。止まらないものが先に決まっていること、止めた状態に期限が無いこと、端末ごとに別の仕組みになっていることです。この記事はその3つを、Microsoft・Google・Apple の公式の文面で並べた記録です。出典は本文に置いています。
上位は「会話ごとにミュートする手順」で終わっている
この語で検索して上位を読むと、書いてあることはほぼ同じでした。Teams はチャットの横の「その他のオプション」からミュート。Google Chat は会話の横からミュート。Webex はスペースごとの通知を「自分へのメンションのみ」に変える。メンションは例外で通る、と書いているページもありました。
操作としては全部正しいです。ただしどれも「止める」か「止めない」の2択で書かれています。 商談で必要なのは2択ではなく、どの範囲に・いつまで・どの機械で止まるかです。そこがずれていると、止めたつもりで鳴ります。
画面を共有している最中に通知の中身まで読まれる話は画面共有で通知を見られない対策に、通知の音だけが相手のところまで届く話はweb会議の通知音が相手に聞こえるに書きました。この記事は鳴る前の話で、どこまで止められるかだけを扱います。
会話ごとに止める口はある。ただし止まらないものが決まっている
まず、できることを正確に書きます。
Teams はチャット単位でミュートできて、公式ページにはこう書かれています(Hide, unhide, mute, add a chat to Favorites, or mark a chat as unread in Microsoft Teams)。
> you won't get notifications from it
> You're only notified of @Mentions
止まるのはメッセージの通知で、メンションは通ります。 これは例外として後から付いた話ではなく、ミュートの説明と同じ場所に並んで書かれています。つまり最初から「メンションは通す」という設計です。商談中に名前を付けて呼ばれたら、ミュートしていても出ます。
同じページには、もう1つ細かい書き分けがあります。
> Muted chats still show bold text for unread messages, but they don't add to the chat badge count
太字にはなるが、バッジの数には足されない。画面に出る信号が2つあって、ミュートが効くのは片方だけだということです。数字が増えないので気づかないが、一覧を開けば太字で分かる。これは逆に言えば、商談中に一覧を開くと目に入るということでもあります。
Google Chat 側はもう少し注意が要ります。ミュートの公式の説明は、通知が止まるとは書いていません(Mute conversations in Google Chat)。ミュートすると、その会話は一覧で強調されない・一覧の上に動かない・Home に出ない、という3つが挙がっているだけです。そして、
> A badge still shows next to conversations where someone mentions you.
メンションされた会話にはバッジが出る、と書かれています。通知そのものを会話ごとに切るのは別の設定で、ダイレクトメッセージなら「All」「For you」「None」の3段、インラインのスレッドがあるスペースなら「All」「Main conversations」「For you」「None」の4段です(Turn Google Chat notifications on or off)。いちばん下の「None」でも、メンションの印は残ると書かれています。
ここまでで分かるのは、どちらのツールも「相手ごとに止める」まではできて、そのうえで「メンションは通す」が仕様として固定されているということです。商談の相手ではなく社内の誰かから来る通知を黙らせたいとき、いちばん止めたいのは名前を呼ばれるほうです。それが通ります。
止めた状態に期限が無い
2つ目のずれは時間です。止めたいのは商談の45分で、そのあとは元に戻したい。ところが会話ごとのミュートに期限はありません。自分で戻すまで続きます。
時間で区切る仕組みは別にあって、Teams の場合はモバイル専用です(Quiet time in Microsoft Teams for mobile devices)。
> Quiet time is a scheduled setting that silences Teams notifications on your mobile device(s) during certain times or days.
読み取れることが2つあります。ひとつ、対象が Teams notifications 全体で、相手ごとではありません。ふたつ、効く先が your mobile device(s) です。商談中にPCで鳴るぶんは、この仕組みの外にあります。
同じページには、止まるものの範囲も書かれています。
> During quiet time, you won't receive sound or push notifications from Teams. However, when you open the Teams app on your device, you'll still be able to view new message or activity notifications.
止まるのは音とプッシュで、アプリを開けば見える。消しているのではなく、呼ばれないようにしているだけです。
ここから、商談の前に打つ手が1つ決まります。相手ごとのミュートは、商談のために使わないほうがいい。 期限が無いので戻し忘れます。戻し忘れたミュートは、次に本当に急ぎの用があったときに効きます。商談の45分を黙らせたいなら、期限が付く仕組み(OSの応答不可やモバイルの時間指定)のほうを使って、終わったら外す形にします。
机の上のスマホは、別の単位
3つ目のずれは端末です。PCで止めても、机に置いたスマホが震えれば商談は止まります。マイクが拾えば音も届きます。
ここはOSによって扱いが違いました。 Apple の集中モードは、端末をまたいで揃えられると公式に書かれています(Set up a Focus on Mac)。
> If you keep Focus up to date across your Apple devices, the changes you make on your Mac are reflected on your other devices.
Mac で変えたことが他の端末にも映る、と書かれています。iPhone と Mac を使っているなら、片方で入れれば両方に効く形にできます。
一方 Teams の時間指定はさきほどのとおりモバイル側にしかなく、設定する場所も「モバイル端末で Teams アプリを開いてプロフィール写真をタップする」と案内されています。PC側から机のスマホを黙らせる口は、このページには書かれていません。
つまり、揃えられるかどうかは使っている組み合わせ次第です。Apple で揃えているなら1回で済み、OSとアプリが混ざっているなら端末ごとに入れることになります。確実なのはスマホを机から離すことで、これは設定を1つも開かずに済みます。
ブラウザで開いていると、単位は「サイト」になる
もう1つ、見落としやすい経路があります。チャットをブラウザのタブで開いている場合です。
このとき通知を出しているのはアプリではなくブラウザで、ブラウザが持っている単位はサイトです。 Chrome の通知設定は、送らせないサイトをアドレスで足す形になっています(Chrome で通知を管理する)。
> Next to 'Not allowed to send notifications,' select Add. Enter the site's web address.
入れるのはウェブアドレスです。相手の名前を入れる欄はありません。 ここで止めれば確実に止まりますが、止まるのはそのサイトの通知全部です。商談中だけそうしたいなら、商談のあとに戻す作業が付いてきます。
Google Chat の公式ページも、アプリ側の設定だけでは完結しないと書いています。
> To turn notifications on or off, you might need to update your browser notification settings.
アプリの中で会話ごとに決めたつもりでも、ブラウザ側の設定を触る必要があるかもしれないと公式が書いている形です。単位が2段あって、下の段はサイトまでしか降りません。
さらに、タブを閉じれば終わりとも言えません。ウェブの通知の仕組みには、ページより長生きするものがあります(Notifications API(MDN))。
> Persistent notifications are created from a service worker, and can remain interactive beyond the lifetime of an individual page.
サービスワーカーから出た通知は、1枚のページの寿命を超えて残れると書かれています。タブを閉じたから鳴らない、という線は引けません。
OSごとに、単位そのものが違う
ここまでをまとめると、通知を止める口は4段に分かれていました。相手(会話)・アプリ・サイト・端末です。そして、どの段が使えるかがOSで違います。
Apple の集中モードには、人を単位にした口があります。
> Allow notifications from certain people: Click the pop-up menu next to Notifications, then choose Allow Some People.
> Silence notifications from certain people: Click the pop-up menu next to Notifications, then choose Silence Some People.
通す人を選ぶ(Allow Some People)か、黙らせる人を選ぶ(Silence Some People)かを、OSの設定で選べます。アプリを単位にする口も同じ場所にあって、「Allow Some Apps」と「Silence Some Apps」が並んでいます。人とアプリのどちらを単位にするかを、使う側が選べる作りです。
Windows 側は、前に調べたとおり通す対象をアプリで指定する形で、通知の表示と音のスイッチも別に並んでいます(詳しくは通知音の記事に書きました)。同じ「応答不可」という言葉で、単位が違います。 だから「Macでできたから Windows でも同じ」と考えると外れます。
Chrome の通知設定には、もう1つ覚えておくと楽な項目があります。「Use quieter messaging」を選ぶと、
> A website can still ask you to allow notifications, but no pop-up prompt will show.
サイトは許可を求められるが、ポップアップは出なくなる。商談中に画面の隅で「通知を許可しますか」が出るのを防げます。通知そのものとは別に、通知を許可するかを聞いてくる窓も商談の邪魔になるので、ここは先に入れておくほうが得です。
うちは未読の信号を2つしか作っていない

私たちが作っている Meetnect のチャットにも、人を単位にしたつまみはありません。作らなかったので、ここは「できないこと」として書きます。
コードで確かめられる形で書くと、未読の信号は2つだけです。ひとつは全員に向けたチャットで、room.html の 631行で unread=0 という変数を1つ持ち、2021行でメッセージが届くたびに1つ増やしてボタンのバッジに数字を出します。もうひとつは社内だけのチャットで、こちらは数字ではなく点1つです(2020行で pdot を出すだけ。CSS の 151行で7ピクセルの丸と決めていて、中に文字を入れていません)。社内だけのチャットの使い方は商談に同席して見学するに書きました。
誰から来たかは分かっているのに、信号は分けていません。 メッセージの1行目には送り主の名前が出ます(2017行)。それでも未読の数は部屋に1つで、相手ごとには分かれません。チャットを開いた瞬間に unread=0 に戻してバッジを消します(1860行)。まとめて消える作りです。
分けなかった理由は2つです。ひとつ、商談は1つの部屋に数人が同時にいる場なので、「この人のだけ止める」の止める対象が最初から無い。ふたつ、商談中に鳴ってしまう通知は商談の外から来るので、うちの画面につまみを置いても届きません。止める場所は、鳴らしている側のアプリかOSか、机の上です。
音で知らせる口も作っていません。public/ の8ファイルすべてで new Audio( が0件、<audio> の要素が0件、ブラウザの通知を出す Notification( も0件で、許可を求める requestPermission も0件です。通知の許可を一度も求めないので、商談中にうちのせいで許可の窓が出ることはありません。 さきほどの Chrome の静かな通知の話は、うちには当てはまりません。
商談の前に打てる手
あとから取り消せないもの(相手に見えた・聞こえた通知)から潰す順番です。
スマホを机から外す。 設定を1つも開かずに済み、音も振動も画面も同時に片付きます。端末の単位は、仕組みより物理のほうが確実です。
期限が付く仕組みで止める。 OSの応答不可や、モバイルの時間指定を使います。会話ごとのミュートは期限が無いので、商談のためには使わない。戻し忘れが残ります。
メンションは通る前提で考える。 Teams も Google Chat も、ミュートの説明と同じ場所に「メンションは通す」と書いています。黙らせたい相手に名前を呼ばれたら出ます。
ブラウザで開いているチャットは、タブを閉じるだけで安心しない。 サービスワーカーから出る通知はページより長生きします。サイト単位で止めるか、商談の前に一度サインアウトするほうが確実です。
許可を聞いてくる窓を先に静かにする。 Chrome の「Use quieter messaging」を入れておきます。
この5つの効果は測っていません。順番の根拠は、取り消せないことから潰す、という考え方だけです。
分からなかったこと
3つ、確かめられませんでした。ひとつ、Google Chat のミュートの説明には通知が止まるとは書かれていないので、ミュートと通知設定のどちらがどこまで効くのかは公式の文面から決められませんでした。ふたつ、Teams の時間指定をPC側から入れられるかは、あのページに書かれていません。書かれていないことを「できない」とは書けないので、分からないままにしています。みっつ、会議中の通知が実際にどれくらい相手に届くかは、こちらで測っていません。この記事の記述は、Microsoft・Google・Apple・MDN の公式の文面と、うちのコードの中身だけです。
Meetnectの場合
Meetnect のチャットは、未読を部屋ごとの数字と社内だけの点の2つで表すだけで、人を単位にしたつまみはありません。音で知らせる仕組みも、ブラウザの通知を出す仕組みも持っていないので、通知の許可を求める窓が商談中に出ることもありません。商談の外から来る通知は、鳴らしている側のアプリかOSか机の上で止めてもらう形になります。この記事で挙げた進め方の効果は測っていません。