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オンライン商談と対面の成約率を比べた数字は、どこから来たのか

2026年9月25日

検索結果に並ぶ複数の記事から矢印が伸び、すべてが1つの調査資料に集まっている
検索結果に並ぶ複数の記事から矢印が伸び、すべてが1つの調査資料に集まっている

商談をオンラインに切り替えると、成約率は落ちるのか。判断の材料が欲しくて検索すると、いくつかの記事が具体的な数字を出しています。7%、0%、1%、6%。並べ方まで似ています。

この記事は、その数字の出どころをたどった話です。読むと、数字を出している記事がどれも同じ1本の調査に行き着くこと、その調査が測っていたのは成約率ではないこと、そして自分の会社で対面と比べようとすると何が揃わないかが分かります。

結論を先に書きます。オンラインと対面の成約率を比べた数字を、私たちは見つけられませんでした。


この記事の内容
  1. 数字を出している記事は、同じ1本にたどり着く
  2. その調査が測っていたのは、成約率ではない
  3. 31件という数で「率」を言えるか
  4. 自分の会社で比べようとすると、分母が揃わない
  5. 数字が無いところで、何を見るか

数字を出している記事は、同じ1本にたどり着く

「オンライン商談 成約率 対面 比較」で検索すると、上位10件のうち数字を出しているのは数本です。残りは進め方のコツで、数字はありません。

数字を出している側を開くと、書いてあることがほぼ同じでした。成約したオンライン商談では7%、失注したオンライン商談では0%、対面は逆で成約が1%、失注が6%。ある記事は出典を書かずに「ある調査によると非常に興味深い結果が出てきました」とだけ書いていました。調査の名前も、実施した主体も、件数もありません。

たどると、コグニティ株式会社のプレスリリースに行き着きます。2020年の発表で、この4つの数字はここから出ています。

つまり「オンライン商談の成約率は対面とこう違う」として流通している数字は、1本の調査から枝分かれしたものでした。何本もの調査が同じ方向を示している、という状態ではありません。


その調査が測っていたのは、成約率ではない

プレスリリースを開いて、原文を読みます。数字が出てくる一文はこうです。

> 成約したオンライン商談の平均値として「数値などの客観情報」が全体の7%ほど説明されていることに比べ、失注した商談の平均値は0%でした。比較して、対面商談で成約した商談での平均値は1%に留まり、失注した商談の平均値が6%となり

読むと分かりますが、7%も0%も、成約率ではありません。 商談の話の中で「数値などの客観情報」がどれくらいの割合を占めていたか、という数字です。成約した商談と失注した商談を後から見比べて、話し方の中身がどう違っていたかを調べたものです。

このプレスリリースに、成約率そのものの数値は出てきません。 オンラインの成約率が何%で、対面が何%だった、という記述はどこにもありません。私たちは2回読み直して確かめました。

調査の規模も原文に書かれています。

> 以下の図表はコグニティが保有する近年の商談トークデータ(初回商談31件・全1,500分)から

31件です。 そして、その31件が対面とオンラインにそれぞれ何件ずつ分かれ、成約と失注にそれぞれ何件ずつ分かれたのか、内訳は書かれていません。 業種も、商材も、企業規模も、調査した期間も書かれていません。

誤解のないように書いておくと、調査を出した側は件数を隠していません。 31件と全1,500分は、図表の説明としてそのまま書いてあります。ずれが起きているのは、これを引くときに件数が落ち、「成約率の差」という言葉に置き換わるところです。


31件という数で「率」を言えるか

調べた数が多いほうは推測の幅が細く収まり、数が少ないほうは幅が大きく広がっている
調べた数が多いほうは推測の幅が細く収まり、数が少ないほうは幅が大きく広がっている

仮にこの調査が成約率を出していたとして、31件という数から全体のことを言えるのか。ここは計算で確かめられます。

総務省統計局が、標本誤差の計算のしかたを公開しています。標本誤差とは、母集団の全部ではなく一部を調べたために生じる、推測の幅のことです。ページには例が置いてあります。20歳以上の市民20万人から1,000人を抜き出して調べ、ある割合が0.5だったとき、標本誤差は0.0315。誤差を0.02まで縮めたければ、2,470人以上が必要になる、と書かれています。

この例の数字を、こちらでも同じ式で再現できました。割合0.5、標本1,000、母集団20万で計算すると0.0315になります。式と係数が合っていることは、これで確かめられます。

同じ計算を31件に当てはめます。割合を0.5として、推測の幅はおよそ±18ポイントでした(計算値。母集団の大きさが分からないので、それによって幅を縮める項は入れていません)。

±18ポイントというのは、たとえば「40%だった」という結果が出たとき、本当のところは22%から58%のどこかにある、という意味です。この幅では、オンラインと対面のどちらが高いかを言えません。 そして31件はさらに4つに分かれるので、1つの区分はもっと少なくなります。

繰り返しますが、この調査は成約率を出していません。出していないものを責めているのではなく、31件という規模は、話し方の傾向を見るには使えても、率の大小を決めるには足りないということです。調査そのものは、そういう使い方をしています。


自分の会社で比べようとすると、分母が揃わない

他社の数字が使えないなら、自分のところで測ればいい。そう考えて手を付けると、今度は別のところで詰まります。分子より先に、分母が揃いません。

詰まるのはこの3つです。

1. 「商談1件」の数え方が、前後で変わっている。 オンラインにすると日程が合わせやすくなるので、対面の頃なら訪問しなかった相手とも会えます。その分、母数に入る件数が増えます。同じ数え方をしているつもりでも、数えている対象が入れ替わっています。

2. 比べている期間が、別の何かとも重なっている。 対面だった時期とオンラインの時期は、当然ながら別の時期です。その間に商材も、価格も、担当者も、問い合わせの来かたも動いています。差が出たとして、それがオンラインのせいだと切り分ける方法を、私たちは持っていません。

3. 対面の頃の記録が、同じ粒度で残っていない。 訪問の記録は日報や手帳に散っていることが多く、オンラインに変えてからの記録と粒度が合いません。比べるには両側が同じ形で残っている必要があります。

3つとも、ツールを入れて解決する種類の話ではありません。数え方を先に決めて、そこから貯め始めるしかないというのが、いまのところの答えです。


数字が無いところで、何を見るか

では判断材料が何も無いかというと、そうではありません。成約率という1つの数字に寄りかかるのをやめると、見られるものはあります。

3つ目は、記録が残っていればすぐ始められます。反応の読み取りについてはオンライン商談で相手の反応が読めないときに、話す長さについてはオンライン商談は何分にするかに書きました。


Meetnectは、商談の結果を記録していません。ルームに持たせている情報は、日時、ルーム名、取引先名、タグ、商談か社内かの区別、そして議事録とボードの保存先だけで、成約・失注を入れる欄はありません(schema.sql の rooms テーブルを見ると入っていません)。だから成約率はMeetnect側からは出せません。出すなら、手元の台帳や顧客管理の仕組みと突き合わせることになります。残っているのは、いつ誰とどれだけ話し、何が決まったかという記録のほうです。

商談しながら、議事録ができています

Meetnect はブラウザだけで動くオンライン商談ツールです。相手は登録不要、URLを開くだけ。通話中に文字起こしが進み、終わった時点で「誰が何を言ったか」まで残った議事録ができています。7日間、カード登録なしで試せます。