オンライン商談は何分が適切?30分と40分の出どころを確かめた
2026年9月23日

オンライン商談の時間を調べると、30分、40分、60分という数字が並びます。理由はどの記事もほぼ同じで、「画面越しだと集中力が続かないから」。この記事でも、短いほうがいいという結論自体は変えません。ただ、その手前に確かめておくことがあります。30分も40分も、誰かが商談を観察して決めた数字ではなく、道具の側の既定値と制限から来ている可能性が高いからです。各社の公式資料で出どころをたどり、出典を本文に置きました。
上位が言っていること
上位の記事を読むと、数字は思ったより揃っていません。
- CLF PARTNERS:オンライン商談は30〜60分
- ONLYSTORY:平均的な商談時間は2時間。根拠は「人間の集中力の限度は90分であると言われているため」
- SalesZine:対面の半分しか集中力が持たない、という切り口
この2本を読んだ範囲では、時間の根拠として調査や公式資料を挙げている記事はありませんでした。 「言われている」「集中力が持続しにくい」という説明で止まっています。
そして、どの記事もその数字がどこから来たのかには触れていません。実務でずれるのはここです。何分にするかを自分で決めたつもりでも、招待を作った時点で別のものが決めているからです。
「30分」を決めているのは、招待を作る画面の既定値
Google Workspace の管理者向けヘルプに、組織内の予定にデフォルトの期間を設定するというページがあります(support.google.com/a/answer/9347087 から移動しています)。ここに、「予定の期間の推奨値は 30 分です。」と書かれています。
同じページには、こうもあります。「ユーザーがデフォルトの期間を設定している場合、組織のデフォルト値は無視されます。」 つまり、長さは3段階で決まります。Google の推奨、会社の管理者が入れた値、本人の設定。この3つのどれかが、予定を作る画面を開いた瞬間に入っています。
多くの人は、その数字を触りません。触るのは開始時刻だけで、終わりは既定のまま送ります。「30分の商談」は、30分が適切だと判断した結果ではなく、既定値が30分だった結果であることがあります。60分の商談も同じです。
Outlook にも、長さに手を入れる設定があります。すべてのイベントを自動的に短くするでは、「1 時間未満」と「1 時間以上」のイベントで、それぞれ短縮する分数をドロップダウンから選ぶと説明されています。設定すると「Outlook for Windows、Outlook for Mac、Outlook on the web、Outlook for iOS、および Outlook for Android で適用されます」とあり、自分の全端末に効きます。
なお、選べる分数の具体的な値と、この設定が既定でオンかオフかは、日本語・英語の公式ページのどちらにも書かれていませんでした。 ここは確かめられなかったので、数字を書きません。
「40分」の出どころは、無料プランの区切り
40分という数字は、集中力の研究から出てきたものではありません。Zoom の公式ヘルプ Understanding time limits for Zoom Meetings に、こう書かれています。
> Almost all meetings scheduled and hosted by Basic (free) users, on Free and Paid accounts, are limited to 40 minutes.
無料(Basic)ライセンスが主催する会議は、ほぼすべて40分まで。 同じページには、この制限が1対1でも変わらないことが書かれています。例外は「ホストが会議を始めて、他の参加者が誰もいない状態」で、この場合は40分で切られません。
有料ライセンスの上限は30時間です。ただし、途中で他の人が退出して1人だけが残った場合は、誰も入ってこなければ40分後に終了します。
ここで分かるのは、40分は会議の適正な長さではなく、課金の境目だということです。「オンライン商談は40分で」と言われたとき、その根拠が人間の集中力なのか、それとも主催者が無料プランなのかは、区別されていません。区別しないまま「40分が適切」として広まっています。
自分が招待される側になったときは、逆の見方もできます。相手の会議が40分ぴったりで切れる設計なら、相手は無料プランで主催している可能性があるということです。長引きそうな商談なら、こちら側で部屋を用意したほうが途中で切れません。
短くしても、連続で入れたら戻る

「集中力が続かない」という説明の裏側に、実際に測った研究があります。Microsoft が自社の Human Factors Lab で行った脳波の調査です。
やったことは単純です。14人に脳波計(EEG)を着けてもらい、ビデオ会議に参加してもらう。1回目は30分の会議を4本、休憩なしで連続。2回目は同じ4本の間に10分の瞑想の休憩を挟む。この2つを比べました。
結果はこうです。
- 休憩なしの2時間では、ストレスに関連するベータ波の平均的な活動が、時間とともに上がり続けた
- 休憩を挟むと、ベータ波が下がり「リセット」が起きた
- 会議と会議の切り替わりで、ベータ波が跳ね上がった(終わりかけの会議と次の会議を同時に考えるため)
- 休憩があると前頭部のアルファ波の非対称が正の値になり、これは関与の高さと相関する。休憩がないと負の値で、引いている状態を示した
注意点として、参加者は14人です。 社内の実験で、商談ではなく会議を対象にしています。それでも、ひとつはっきり読み取れることがあります。効いているのは会議の長さだけではなく、会議と会議の間があるかどうかだということです。
30分に短くしても、その30分を切れ目なく4本入れたら、この実験の1回目と同じ形になります。短くすることの利益は、空いた時間を次の商談で埋めた瞬間に消えます。
商談の時間をどう置くか
ここまでで確かめられたのは、数字の出どころだけです。何分が成約率に効くかは測っていないので、以下は整理であって効果ではありません。
招待を作る前に、既定値を一度見る。 30分なのか60分なのかを知らずに送っていると、長さは相手にとって「先方が決めた枠」として届きます。初回のヒアリングと、条件を詰める2回目では必要な長さが違うはずですが、既定のままだと同じ長さで並びます。
40分で切れるかどうかを、招待する側が把握しておく。 自分が無料プランで主催しているなら、途中で切れることを前提に、山場を前半に置くか、別のツールで部屋を用意します。切れてから入り直すと、相手の集中はそこで一度落ちます。
連続で入れない。 商談の直後に別の商談を置くと、前の商談の議事録を整える時間がなくなり、次の商談に前の話を引きずったまま入ります。上の実験が示しているのは、その切り替わりが一番きついということです。
長さを決めるのは、話す量ではなく決めることの数。 「30分で足りるか」ではなく、「今日決めるのは何と何か」を先に置くと、長さは後から決まります。決めることが1つなら30分は長すぎますし、3つあるなら60分でも足りません。
Meetnect では、予約からカレンダーに登録するとき、終了時刻を開始の1時間後で入れています(worker.js)。商談の実際の長さは中で決まるものなので、招待の時点では標準の枠だけを置く、という作りです。録画と議事録は時間の区切りとは関係なく動くので、予定より早く終わっても、延びても、終わった時点の記録が残ります。
参考
- 組織内の予定にデフォルトの期間を設定する(Google Workspace 管理者 ヘルプ)
- すべてのイベントを自動的に短くする(Microsoft サポート)
- Understanding time limits for Zoom Meetings(Zoom サポート)
- Research Proves Your Brain Needs Breaks(Microsoft WorkLab)