web会議ツールの乗り換えで過去の録画はどうなるか|消える境目は契約
2026年9月28日

web会議のツールを乗り換えるとき、これまでの録画がどうなるかを調べると、出てくる答えは「乗り換える前にダウンロードしておきましょう」です。間違っていません。ただ、その通りに段取りを組もうとすると、一度詰まります。消えるツールと消えないツールがあり、しかも締め切りは解約を押した日からは始まらないからです。録画がどこにあって、いつ消えるのかを、Zoom・Microsoft Teams・Google Meet の公式ヘルプで確かめました。
一般論は「乗り換える前に落とす」で合っている
この問いを検索すると、上位に並ぶのは「web会議を録画する方法」「録画できるツール8選」といった記事です。録り方と、どのツールが録れるかは丁寧に書かれています。乗り換えたあとに古い録画がどうなるかを正面から扱ったページは、上位には見当たりませんでした。
それでも、一般論そのものは正しいです。Zoom の公式ヘルプも、サブスクリプションの解約ページで同じことを書いています。「残しておきたい録画は、解約が有効になる前にダウンロードしてください」(Canceling your Zoom subscription)。
問題は、この一文を実行に移そうとしたときに出てきます。いつまでに、どれを落とせばいいのかが、これだけでは決まりません。
詰まるのは、乗り換えの単位と、消える単位がずれていること
乗り換えの計画は、ふつう「会議ツール」を単位にして立てます。新しいツールを契約する、アカウントを配る、社内に周知する、古いツールを止める。この順番で日付を置きます。
ところが、過去の録画が消えるかどうかを決めているのは、会議ツールではありません。その下にある契約のほうです。
3つのサービスを並べると、ここがはっきり分かれます。同じ「web会議ツールを乗り換える」でも、録画が一緒に消えるものと、まったく消えないものがあります。
Zoom:締め切りは「解約した日」から数えない
Zoom のデータ保持の文書には、クラウド録画の保持期間がこう書かれています。「クラウド録画は、エンドユーザーが有効なアカウントを持っている限り保持されます」(Zoom Meetings, Webinar, and Chat Data Retention Standard)。残る条件が「有効なアカウントがあること」です。契約が終われば、その条件が外れます。
そのあと何日あるかは、解約ページに書かれています。「有料サブスクリプションが終了すると、クラウド録画は30日間利用できます。30日を過ぎると完全に削除され、復元できません」。
ここで効いてくるのが、解約がいつ効くかです。同じページに「解約は次の更新日をもって有効になります。サブスクリプションとサービスは、現在の請求期間が終わるまで有効なままです」とあります。
つまり、時計は2本あって、どちらも「解約ボタンを押した日」からは動きません。 1本目は次の更新日まで。2本目はそこから30日。手元のカレンダーに書くべき日付は、押した日ではなく「次の更新日 + 30日」です。
実務で厄介なのは、この更新日が自分で選べないことです。二重払いを避けようとすると、古いツールは更新日ちょうどで止めることになります。その日が、そのまま録画の30日の開始点になります。新しいツールの立ち上げでいちばん忙しい時期と、まっすぐ重なります。
TeamsとGoogle Meet:録画は会議ツールの中に無い
Teams はつくりが違います。Microsoft の管理者向けドキュメントには「organization のユーザーが Teams 会議をレコーディングして文字起こしすると、レコーディングと文字起こしは職場または学校の OneDrive と SharePoint のいずれかに保存されます」とあります(OneDrive と SharePoint での Teams 会議のレコーディングと文字起こしの保存とアクセス許可)。会議やイベントなら開催者の OneDrive の「レコーディング」フォルダ、チャネル会議ならチームの SharePoint です。
同じページには、もっとはっきりした一文もあります。「ビデオは OneDrive と SharePoint の他のファイルと同じです」。
Google Meet も置き場所は同じ考え方で、録画は「会議の主催者の Google ドライブの『Google Meet』フォルダ」に保存され、会議ごとにサブフォルダが作られます(ビデオ会議を録画する - Google Meet ヘルプ)。
ということは、Teams や Meet を使うのをやめても、その下の Microsoft 365 や Google Workspace を続けるなら、録画はファイルとしてそのまま残ります。 会議ツールを乗り換えたのに、録画側では何も起きません。
逆の場合は起きます。契約ごと移るときです。Google の管理者ヘルプには「Google Workspace サブスクリプションを解約すると、ユーザーの Google Workspace データは削除され、復元できなくなります」「Google Workspace サブスクリプションを解約する前に、保存したいユーザーデータをダウンロードしてください」と書かれています(Google Workspace を解約する)。
「会議ツールを乗り換える」と一言で言うとき、この2つが混ざっています。会議のツールだけを変えるのか、その下のアカウント基盤ごと変えるのか。録画にとっては、別の出来事です。
持ち出しには日数がかかる
「解約の前に落とす」の"前に"を、1日だと思っていると足りません。
Google のデータエクスポートツールは、開始するとまず全ての特権管理者に通知メールが送られ、実際のエクスポートが始まるのはその48時間後です。完了までは通常72時間ほど、データ量によっては14日かかることがあります。使うには管理者アカウントが30日以上経っている必要があり、書き出されたデータは60日後に自動で削除されます(組織のデータをすべてエクスポートする)。
つまり、押してから手元に揃うまでが、最短でも数日です。Zoom 側のように1本ずつ落とす場合も、本数と回線で時間が決まります。何ギガバイトを何時間で落とせるかはこちらでは測っていないので、数字は出しません。
確かめられなかったこともあります。Google のエクスポート対象の一覧に「Meet の録画」という名指しはありません。録画はドライブに保存されるので、ドライブのデータとして出てくるはずだと思いますが、ヘルプに書かれていない以上、断定はしません。移行の前に、1件で試してから本番に入るのが確実です。
ファイルを退避しても、付いてこないものがある

無事にダウンロードできても、元の場所にあったときと同じには戻りません。
Microsoft のドキュメントには、こう書かれています。「Teams 会議のレコーディングが OneDrive または SharePoint 上の元の場所から移動またはコピーされた場合、クローズド キャプションは完全にはサポートされません」。動画は残っても、字幕は付いてきません。
もうひとつは、貼ってあるリンクです。社内の議事録や案件の管理画面に録画のURLを貼っていた場合、そのURLは元の保存先を指しています。ファイルを別の場所に置き直せば、指し先はそのままで中身だけが無くなります。落としたファイルはフォルダに並んでいるのに、過去の案件から録画にたどり着けない、という形になります。
だから、退避の作業には「どこに貼ったか」を洗い出す工程が要ります。ここは公式ヘルプには載っていません。自分たちの貼り方しだいだからです。
Meetnectでは
Meetnect は、録画の保存先を会社ごとに選ぶかたちにしています。Google ドライブ(保存先フォルダを指定でき、共有ドライブも選べます)、端末にダウンロード、Meetnect 側のサーバーの3つです。前の2つを選ぶと、ファイルは Meetnect の外、会社側の置き場所にできます。ただしサーバー保存を選べばファイルは Meetnect の中に入るので、そのときは上に書いたのと同じ話になります。どれを選ぶかは、乗り換えの話とそのまま同じ判断です。