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オンライン商談で体験談を紹介するとき|景品表示法の関門は2つ

2026年10月13日

商談の中盤で「同じ業種のA社では、こう変わりました」と体験談を出す。このときに当たる景品表示法の関門は、1つではなく2つあります。しかも、2つは通る条件が逆を向いています。 好意的な声だけを選ばなければ1つ目は抜けますが、効果の裏付けとして出すなら、無作為に集めた相当数が必要になります。片方を直しても、もう片方は残ります。

消費者庁のQ&Aと条文で、どこで何に当たるのかを確かめました。

この記事の内容
  1. 検索して出てくる解説は、ほとんどがECサイトとSNSの話
  2. 1つ目の関門:好意的な声だけ選ぶと、相手の言葉が自分の表示になる
  3. 2つ目の関門:体験談は、効果の根拠としては使えない
  4. 2つの関門は、通る条件が逆を向いている
  5. 止まり方も違う。課徴金が付くのは片方だけ
  6. 商談で出すなら、言い方を2つに分ける
  7. 確かめられなかったこと

検索して出てくる解説は、ほとんどがECサイトとSNSの話

「体験談」「お客様の声」で検索すると、上位に並ぶのは健康食品の広告、ECサイトのレビュー、インフルエンサーの投稿です。商談の席で口に出す場面を扱ったものは見つけられませんでした。

これは解説記事の偏りではなく、元になっている公式資料がそうなっています。 消費者庁のステルスマーケティングに関するQ&Aの本文を数えると、「SNS」が34回、「ウェブサイト」が7回出てきます。これに対して「商談」「営業」「対面」「資料」「電話」は0回です。「口頭」は1回だけ出てきますが、それは事業者と第三者のやりとりの手段(メール、口頭、送付状)の例としてで、口頭で行う表示そのものの話ではありません。

商談で体験談を出す場面は、公式の説明が置かれていない場所です。だから条文と、別のページに分かれて書かれている考え方を自分で組み合わせる必要があります。

1つ目の関門:好意的な声だけ選ぶと、相手の言葉が自分の表示になる

2023年10月1日から、広告であることを隠した表示が景品表示法違反になりました。第5条第3号が内閣総理大臣の指定する表示を不当表示とし、その指定の7番目が「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)です。

ここで効くのが、ステマQ&AのQ10です。アンケートの回答を「お客様の声」として自社サイトに載せる場合について、消費者庁はこう書いています。

> 一方で、例えば、商品について好意的な評価をしているものだけを選んで引用する場合や、商品の「良い点」・「悪い点」を挙げている回答の「良い点」の部分だけを引用する場合は、「事業者の表示」に当たると考えられます。

逆に、無作為に選んだ回答をそのまま引用する場合は「事業者の表示」に当たらないとされています。つまり境目は、声の中身ではなく選び方です。商談で見せる体験談は、ふつう好意的なものだけを選んでいます。選んだ時点で、相手の言葉は自分の表示になります。

当たるのは声をくれた取引先ではありません。Q1は、対象となるのは「その内容の決定に関与した事業者(いわゆる広告主)」だと書いています。体験談を語った会社の側は規制の対象外です。Q9には、感想を自社に都合の良い内容に改めるよう依頼した場合、修正後のレビューは「事業者の表示」に当たるとあります。文言を直してもらう一手でも、同じことが起きます。

なお、商談で口に出した場合も景品表示法の「表示」には入ります。指定の告示が口頭と電話を名指ししているからで、これは商談の値引きと二重価格表示で確かめました。媒体の問題ではありません。

2つ目の関門:体験談は、効果の根拠としては使えない

ここまでは「広告だと分かるようにしたか」の話です。もう1つは「言っている中身に裏付けがあるか」で、こちらは別のページに書かれています。

表示に関するQ&AのQ15が、使用者の体験談を表示の裏付けとして出せるかに答えています。

> 商品の購入者から送られて来る体験談についても、体験談を送って来る人はその商品を購入して効果のあった人が多いと考えられ、効果のなかった人との比較が正しくできないことなどから、客観的に実証されたものとは認められません。

同じ答えの前半では、自社の従業員やその家族など利害関係のある人の体験談を集めた調査も、作為的な要素を含むため統計的に客観性が確保されたものとはいえないとされています。根拠として認められるには「無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して調査する」ことが必要だと書かれています。

裏付けを求められる仕組みは条文にあります。第7条第2項は、第5条第1号に該当するか判断するため必要があると認めるときは資料の提出を求めることができ、事業者が資料を提出しないときは「当該表示は同号に該当する表示とみなす」と定めています。提出期限は、Q12によれば書面で求めた日から原則として15日以内です。

2つの関門は、通る条件が逆を向いている

並べると、求められていることが反対になります。

1つ目(判別が困難な表示)2つ目(優良誤認)
当たる条文第5条第3号の指定告示第5条第1号
通る条件恣意的に抽出せず、そのまま引用する無作為抽出で相当数を集め、統計的な客観性を確保する
選んだ場合「事業者の表示」であることを明瞭にすれば足りる選んだ体験談は根拠にならない
2つの門が並び、左の門の前では漏斗が札を1枚だけ通し、右の門の前には同じ札がかごいっぱいに積まれている。門と門のあいだを2本の矢印が逆向きに結んでいる
2つの門が並び、左の門の前では漏斗が札を1枚だけ通し、右の門の前には同じ札がかごいっぱいに積まれている。門と門のあいだを2本の矢印が逆向きに結んでいる

1つ目は「選ぶなら、選んだと言え」で済みます。2つ目は「選んだものは根拠にならない」です。 だから「これは当社が選んだ事例です」と前置きして好意的な声だけを見せるやり方は、1つ目は抜けますが、その声を効果や性能の裏付けとして出した瞬間に2つ目へ移ります。前置きは2つ目には効きません。

明瞭にする書き方そのものは緩やかです。Q11は「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」以外の用語も禁止されておらず、「A社から商品の提供を受けて投稿している」のような文章でもよいとしています。表示内容全体から事業者の表示だと分かればよい、という基準です。

止まり方も違う。課徴金が付くのは片方だけ

2つは、違反したときの結末も違います。第8条第1項の括弧書きがそれを決めています。

> 事業者が、第五条の規定に違反する行為(同条第三号に該当する表示に係るものを除く。以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは

第3号、つまりステマ告示に当たる表示は、課徴金対象行為から外されています。 ステマQ&AのQ2も「課徴金納付命令の対象にはなりません」と明記し、続けて「ただし、違反行為の内容に優良誤認表示又は有利誤認表示が含まれる場合は、当該行為が課徴金納付命令の対象となることがあります」と書いています。

課徴金の額は第8条第1項で、課徴金対象期間の売上額に「百分の三を乗じて得た額」です。同項には、その額が150万円未満のときは納付を命ずることができないこと、表示が優良誤認・有利誤認に当たることを知らず、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められるときも命じられないことが書かれています。ただしこれは課徴金の話で、第7条第1項の措置命令はどちらの関門でも出ます。

整理すると、広告だと分かるようにするだけで回避できるのは、金銭が動かない側だけです。体験談を効果の裏付けとして出し、その裏付けが示せなければ、第5条第1号のほうに移り、売上額の3%が視野に入ります。

商談で出すなら、言い方を2つに分ける

ここから先は条文の読みからの提案で、効果を測ってはいません。

確かめられなかったこと

Meetnectは、オンライン商談の録画と議事録を残すツールです。商談で何をどう言ったかが記録として残ると、あとから「その体験談をどう前置きしたか」を見返せます。議事録の残り方については議事録の話者分離が当てにならないとき、誰が言ったかをどう残すかに書きました。

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