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オンライン商談の移動時間削減|効果を時間で出せない理由と代わりの数字

2026年9月25日

交通費は領収書として7年残るのに対し、移動時間はどこにも記録されないことを示す図
交通費は領収書として7年残るのに対し、移動時間はどこにも記録されないことを示す図

オンライン商談の効果を調べると、必ず先頭に「移動時間の削減」が来ます。そこに添えられている数字も、だいたい決まっています。この記事では、その数字の中身を出典までたどります。結論を先に書くと、よく引用される%は、削減された時間ではなく「効果を感じたと答えた人の割合」です。そして、移動時間が何分減ったかを自社で出そうとすると、元になる記録が社内に残っていません。代わりに出せる数字を3つ整理しました。

この記事の内容
  1. 上位が出している数字は、時間ではなく人の割合
  2. 「68.7%」は211人のアンケート
  3. 移動時間は、社内のどこにも残っていない
  4. 代わりに出せる数字が3つある
  5. 公的統計で代用するときの注意
  6. 減った分が、そのまま商談に変わるわけではない
  7. 参考

上位が出している数字は、時間ではなく人の割合

上位の記事はどれも「移動時間と交通費が減る」と書き、その裏づけとしてアンケート調査の%を置いています。ここで確かめておきたいのは、その%が何を数えた数字かです。

ベルフェイスが出した「オンライン商談」に関する実態調査を見ます。調査時期は2020年4月30日〜5月1日、対象は東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡の企業経営者層と営業職1,000名、方法はインターネットリサーチです。成果として挙げられた項目は「移動コストの削減」が37.3%、次点が「リードタイムの短縮」で18.7%。

このプレスリリースに、移動時間が何分または何時間減ったかという数字はありません。 37.3%は、そう答えた人の割合です。

「68.7%」は211人のアンケート

もうひとつ、よく引用される数字があります。カシオが出しているオンライン商談のコラムの「移動の時間やコストの削減(68.7%)」「業務の効率化(40.3%)」です。

このページは出どころを書いています。2020年12月、外勤営業職を対象にしたインターネットリサーチで、回答者数は211人。出典を明記している点では、数字を置きっぱなしにしている記事より誠実です。

問題は引用され方のほうです。68.7%は、移動時間が68.7%減ったという意味ではありません。 211人のうち68.7%が「成果が出た」と答えた、という割合です。社内の資料にこの数字を「移動時間が約7割減」と書き写すと、根拠のない削減率を報告したことになります。

移動時間は、社内のどこにも残っていない

では、なぜどの調査も分で出さないのか。測ろうとすると、元の記録が無いからです。

訪問の予定を入れるとき、予定表に書くのは商談そのものの枠です。「14:00〜15:00 A社」とは入れても、その前後の往復90分を予定として入れている会社は多くありません。移動は予定と予定のすきまに置かれていて、すきまは記録として残りません。

一方、交通費は残ります。国税庁の帳簿書類等の保存期間では、領収書を含む書類を、確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間保存すると定めています。つまり、法律が残せと言っているのは金額のほうで、時間のほうは誰も残さなくてかまわない。

ここが実務で詰まる点です。「移動時間がどれだけ減ったか」は、過去にさかのぼって出せません。出せるのは金額だけです。

代わりに出せる数字が3つある

時間が出せないなら、出せるものを出します。どれも社内のデータだけで足ります。

1. 旅費交通費の月額。 会計データに実額で入っています。前年同月と並べるだけで済みます。推計ではないので、後から突き返されません。

2. 訪問とオンラインの件数比。 予定表を数えます。「移動が減った」の実体はここなので、削減の話をするならこちらが本体です。

3. 1日あたりの商談件数。 同じく予定表から数えます。増えていなければ、空いた枠は商談以外に使われています。

そして、時間を出せるようにしたいなら、今日から予定表に移動の枠を入れる。 訪問の前後に「移動」を予定として置くと、翌月からは実測で出せます。入れないままだと、来年も同じ質問に同じ答えしかできません。

公的統計で代用するときの注意

社内に記録が無いので、公的統計を当てる手もあります。国土交通省の全国都市交通特性調査は、目的別のトリップ数やトリップ長を5年ごとに全国で集計しています。業務目的の移動も対象に入っています。

ただし、これは都市の交通を見るための調査です。「商談1件あたりの往復時間」を測ったものではありません。 そのまま自社の削減時間に置き換えると、実態と合わない数字を根拠にすることになります。使うなら、何を測った数字かを併記して、自社の値ではないと分かる形にします。

減った分が、そのまま商談に変わるわけではない

移動が消えて空いた枠が、商談ではなく会議や事務で埋まっていく様子を示す図
移動が消えて空いた枠が、商談ではなく会議や事務で埋まっていく様子を示す図

移動が消えると、1日の中に枠が空きます。上位の記事はここから「商談件数が増える」へ一気に進みますが、間に一段あります。空いた枠は、決めておかないと商談以外で埋まります。

実際に埋まりやすいのは、社内会議、見積もりの作り直し、そして前の商談の記録です。訪問していた頃は、その作業を移動中か帰社後にまとめてやっていました。移動が消えると、その作業は消えずに残り、行き場だけが無くなります。

埋め方を先に決めておくと、削減の効果を件数で示せます。決めずに詰め込むと、別の問題が出ます(オンライン商談は何分が適切かに、会議を切れ目なく並べたときの脳波の実験を書いています)。

Meetnect では、予約を作った時点でカレンダーに登録され、録画と議事録は商談が終わった時点で残ります。誰といつ何分話したかが、あとから数えられる形で残るということです。移動時間のように記録が残らないものと違い、件数と長さは後から数えられます。

参考

関連:オンライン商談は何分が適切か/オンライン商談の成約率は対面と比べてどうか/日程調整メール

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