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web会議で自分の声だけ大きいと言われる。下げるつまみは機器に付いている

2026年10月9日

左の机でヘッドセットを着けた人が話し、声が太い1本の青い管に入っていく。管は右側で3本に枝分かれし、それぞれヘッドセットを着けた3人の席の画面へつながる。枝分かれしたあとの3本には、どれにもつまみが付いていない
左の机でヘッドセットを着けた人が話し、声が太い1本の青い管に入っていく。管は右側で3本に枝分かれし、それぞれヘッドセットを着けた3人の席の画面へつながる。枝分かれしたあとの3本には、どれにもつまみが付いていない

商談の途中で「○○さんの声だけ大きいです」と言われる。相手は4人いて、言ってきたのは1人です。マイクの入力レベルを下げると、今度は別の人から「聞こえにくい」と言われる。

検索すると出てくるのは「機器のプロパティで入力レベルを下げる」「自動調整をオフにする」という手順です。どちらも合っています。ただ、そのつまみが何の単位に付いているのかは、どのページにも書かれていません。下げたときに誰に対して下がるのか、下げたものがどこまで残るのかが分からないまま操作することになります。

この記事では、送り出す側の音量つまみが機器・アプリ・自動調整の3つの層に分かれていることを、Microsoft・Zoom・Apple の公式と MDN から確かめます。先に結論を書くと、どの層にも「相手1人」という段はありません。 自分の声を1人にだけ小さく届ける操作は、どこにも用意されていません。出典はすべて本文に置きます。

聞く側に人ごとのつまみが無いことは一人だけ声が小さいときの記事に書きました。この記事はその裏側、送る側の話です。


この記事の内容
  1. 上位に並ぶのは「下げる場所」の手順
  2. 詰まるのは、この3つです
  3. ブラウザから触れるのは、オンとオフだけ
  4. うちは送り出す音に何も掛けていない
  5. 足さなかった理由は、記録の側にあります
  6. 商談の場でできること
  7. 参考

上位に並ぶのは「下げる場所」の手順

この語で検索して上位を読むと、3種類に分かれます。

Windows のサウンド設定でマイクのボリュームを下げる手順。Teams の「マイクの感度を自動的に調整する」をオフにする手順。そして、口からマイクを離す・コンデンサーマイクは拾いすぎるので下げておく、という機材の話です。どれも外していません。

Microsoft の公式ページも同じ場所を指しています。How to set up and test microphones in Windows は、マイクを選んで矢印からプロパティを開き、こう案内します。

> Adjust the Input volume slider if needed.

(必要に応じて入力音量のスライダーを調整してください)。同じページには、試し方も書かれています。

> select Start test and speak normally. Select Stop test and choose Play to hear your recorded sample.

(テストの開始を選んで普通に話し、停止を選んで再生を選ぶと、録音した音を聞けます)。

ここで大事なのは、このスライダーが置かれている場所です。 マイクという機器のプロパティの中です。アプリの中でも、会議の中でもありません。

詰まるのは、この3つです

1. 下げると、全員に対して下がる

「大きい」と言ってきたのは1人です。けれど機器のスライダーは、その機器から出ていく音すべてに効きます。相手が4人なら4人に同じだけ効きます。

会議ツールの側に人ごとの段があるかというと、そこにもありません。Microsoft のManage audio settings in Microsoft Teams meetings は、感度の自動調整をこう説明しています。

> Turn the Automatically adjust mic sensitivity toggle on to ensure everyone hears you at a level volume during a meeting.

(マイクの感度を自動的に調整するトグルをオンにすると、会議中に全員が同じ水準の音量であなたの声を聞けます)。

「everyone(全員)」と書かれています。 言い換えると、この機能が揃えているのは「全員にとって同じ」であって、「この人には小さく」ではありません。端末の設定ページの書き方も同じで、「Automatically adjust mic sensitivity to make sure you're always heard.」(いつでも聞こえるようにマイクの感度を自動調整します)となっています。向いているのは「聞こえるかどうか」で、相手の内訳には触れていません。

Webex も同じ構えです。公式ヘルプには「Use the sensitivity sliders to adjust your speaker and microphone volume.」(感度のスライダーでスピーカーとマイクの音量を調整します)、「You can select Automatically adjust volume for your microphone volume.」(マイクの音量には自動調整を選べます)とあります。スライダーは1本です。

2. 下げたつもりが、自動調整で戻る

手で下げたのに、しばらくすると元の大きさで届いている。これは自動調整が上書きしているときに起きます。Zoom は公式に、この2つの機能が排他だと書いています。

Changing settings in the Zoom Workplace desktop and mobile app の「Automatically adjust microphone volume」の説明です。

> Adjust your microphone's volume automatically to ensure a consistent level, making it easier for other participants to hear you.

(マイクの音量を自動的に調整して一定の水準を保ち、他の参加者が聞き取りやすくします)。そして、

> If you enable this setting, the Input volume manual slider will be unavailable.

(この設定を有効にすると、入力音量の手動スライダーは使えなくなります)。

手動のつまみが消えます。 下げる口が無くなるのではなく、自動調整が代わりに握る、という作りです。同じページには、音が出たり消えたりするなら自動調整を切ることを勧める一文(If you are experiencing issues with your audio fading in and out, consider disabling this setting.)もあります。

だから、下げる順番が決まります。自動調整を切ってから、機器のスライダーを下げる。 逆だと、下げた値が自動調整に書き換えられます。

3. 下げたものが、他のアプリにも残る

機器のプロパティで下げると、その値は会議が終わっても残ります。Microsoft Learn のEndpoint Volume Controls が、この層の正体を書いています。

> This interface controls the volume level of the audio endpoint device.

(このインターフェースは、音声エンドポイント機器の音量を制御します)。同じページは、そのつまみが画面上のどこに出るかも書いています。

> the endpoint volume control appears on the left side of the Sndvol window, in the group box labeled Device

(エンドポイントの音量つまみは、Sndvol のウィンドウの左側、「デバイス」と書かれた枠の中に出ます)。そして、アプリが自分の画面に同じつまみを出す場合の決まりはこうです。

> if the user changes the endpoint volume of a device through the volume control in Sndvol, the corresponding endpoint volume control in the application should move in unison with the control in Sndvol.

(利用者が Sndvol でその機器のエンドポイント音量を変えたら、アプリ側の対応するつまみも一緒に動くべきです)。

同じ1つのつまみを、どの画面から触っても同じ値が動くという設計です。この文章は再生側の例で書かれていますが、同じページの末尾に、録音側も同じだと明記されています。

> You can easily modify the preceding code example to display volume and mute controls for the default capture device.

(前述のコード例は、既定の録音機器の音量とミュートのつまみを表示するよう簡単に書き換えられます)。渡す値を eRender から eCapture に変えるだけ、と続きます。出口と入口で、つまみの付き方は同じということです。

つまり、商談のために下げた値は、そのまま次の録音にも、別の会議アプリにも引き継がれます。翌週に「なぜか声が小さい」と言われる番が回ってきます。

ブラウザから触れるのは、オンとオフだけ

ブラウザで動く会議ツールの場合、アプリ側から大きさを決められるのかを確かめました。結論は、できません。

MDN のMediaTrackConstraints.autoGainControl は、自動利得調整の持ち主をこう書いています。

> Automatic gain control is typically a feature provided by microphones, although it can be provided by other input sources as well.

(自動利得調整は、たいていマイクが備えている機能ですが、他の入力源が備えていることもあります)。そして、サイト側が指定できる値の形はこうです。

> If this value is a simple true or false, the user agent will attempt to obtain media with automatic gain control enabled or disabled as specified, if possible, but will not fail if this can't be done.

(この値が単純な true か false なら、ブラウザは指定どおりに自動利得調整を有効または無効にして取得を試みますが、できなくても失敗にはしません)。

真偽値です。 「どれくらい」を渡す口がありません。さらに、

> This feature is not Baseline because it does not work in some of the most widely-used browsers.

(この機能は、広く使われているブラウザの一部で動かないため Baseline ではありません)とあり、オンとオフの指定すら通らない環境があります。

端末そのものの側も同じです。Apple のinputGain は「The gain applied to inputs associated with the session.」(セッションに結びついた入力に適用される利得)と定義されていて、0.0 から 1.0 の値を取ります。「inputs」が複数形で、単位はセッションです。入力源を1つずつ別の値にする、という形ではありません。

さらに、isInputGainSettable にはこうあります。

> Not all devices support variable gain; check this property before attempting to set the input gain.

(すべての端末が可変の利得に対応しているわけではありません。入力利得を設定する前にこのプロパティを確かめてください)。つまみが存在するかどうかも、端末が決めています。

うちは送り出す音に何も掛けていない

上から降りてきた1本の太い管に、赤いハンドルの弁が1つだけ付いている。その下で管は3本に枝分かれして床へ降りるが、枝分かれした3本には弁もつまみも付いていない。赤い弁と同じ高さから細い枝が右へ伸び、右端の閉じた白い箱へ入っている
上から降りてきた1本の太い管に、赤いハンドルの弁が1つだけ付いている。その下で管は3本に枝分かれして床へ降りるが、枝分かれした3本には弁もつまみも付いていない。赤い弁と同じ高さから細い枝が右へ伸び、右端の閉じた白い箱へ入っている

Meetnect の実装を、この記事で調べた「単位」の目で見直します。

public/room.html の 919行は、相手1人ぶんの接続を作るときに、こうしています。

for(const t of localStream.getTracks())pc.addTrack(t,localStream);

相手が増えるたびに接続は増えますが、入れているのは同じ1本のトラックです。 新しく作り直してはいません。送り出す経路は相手ごとに分かれているのに、源が1つなので、源に手を入れると全員に同じだけ効きます。

これがいちばん分かりやすく出るのがミュートです。マイクのボタン(1054行)と、商談を始める前の画面のボタン(727行)は、どちらもこの1本のトラックの enabled を切り替えるだけです。4人と話していても、切れるのは4人まとめてです。つまみの単位が「全員」であることの、いちばん極端な形がミュートでした。

送り出しの設定を調整する関数もありますが、音には触っていません。886〜897行の tuneSenders は、最初の行で sender.track.kind!=="video" を弾きます。映像には最大ビットレート 4,000,000(約4Mbps)と最大フレームレート30を入れ、解像度を落とさない指定もしています。音の送信者には、1つも値を入れていません。 ブラウザが渡してきた音を、そのまま流しています。

利得を足す部品も置いていません。public/ の8ファイルを createGain で数えると0件です(.volume・setSinkId も0件で、これは聞く側の記事で数えました)。マイクを取り込むときに常に掛けている3つの処理は 721行で固定していて、選ばせていません。その判断の理由は聞き取りにくさの記事に書いたので、ここでは繰り返しません。

足さなかった理由は、記録の側にあります

人ごとの送信つまみを作れないわけではありません。接続は相手ごとに分かれているので、相手ごとに別の音を作って差し替えれば、理屈の上では「この人にだけ小さく」が作れます。

書いていません。理由は、送り出す側のつまみは、残るものまで変えてしまうからです。

文字起こしに回す音は、2123行で localStream から直に取っています。送り出しているトラックと同じ源です。記録に入れる自分の声も同じです。つまり、送信側にゲインを置いて小さくすると、相手の耳だけでなく、議事録の材料になる音も小さくなります。

これは聞く側と逆向きです。聞く側のつまみは、聞こえ方だけを変えて記録を変えませんでした。だから「置かない」の理由が「食い違うから」でした。送る側のつまみは、聞こえ方と記録の両方を変えます。理由は「片方だけ直せないから」です。同じ『置かない』でも、理由が違います。

代わりに、自分の声がどう出ているかは測るだけにしています。設定の画面を開いている間だけ、送っているトラックそのものから入力レベルの横棒を動かします。この横棒が何を測っているかはマイクテストの記事に書きました。測る口は作って、変える口は作っていないという形です。

商談の場でできること

公式に書かれていたことから言えるのは、この4つです。効果は測っていません。

1. 自動調整を切ってから、機器のスライダーを下げる。 順番が逆だと、下げた値が書き換えられます。Zoom のように、自動調整をオンにしている間は手動のつまみ自体が出ないツールもあります。

2. 下げた値が残ることを覚えておく。 機器のプロパティのつまみは、アプリをまたいで同じ1つです。商談のために下げたら、下げたままになります。

3. マイクを口から離す。 こちらは機器のつまみを触らずに済みます。残らないので、次の会議に持ち越しません。距離が音にどう効くかは聞き取りにくさの記事に書きました。

4. 「大きい」と言ったのが誰かを確かめる。 相手が複数いて1人だけが大きいと感じているなら、その人の聞く側で起きていることかもしれません。聞く側に人ごとのつまみが無いことは一人だけ声が小さいときの記事に書いた通りで、その人が会議アプリの音量を上げたままという状態は、こちらからは見えません。

調べていて分かったのは、送り出す側のつまみが機器・アプリ・自動調整の3層に付いていて、効く範囲が下から「この機器から出る音すべて」「このアプリから出る音すべて」「全員が同じ水準になるように」と広がっていくことでした。狭くなる方向には、どこまでいっても「相手1人」が現れません。 1人だけが大きいと感じている状況は、この層の外側に落ちています。


Meetnect はブラウザだけで動くオンライン商談ツールです。送り出す音は1本のトラックで、相手ごとの接続すべてに同じものを入れています。音の送信者にはビットレートも利得も設定しておらず、人ごとに大きさを変えるつまみも置いていません。記録と文字起こしが同じトラックから音を取っているので、送り出しを小さくすると残る音も小さくなるためです。

参考

商談しながら、議事録ができています

Meetnect はブラウザだけで動くオンライン商談ツールです。相手は登録不要、URLを開くだけ。通話中に文字起こしが進み、終わった時点で「誰が何を言ったか」まで残った議事録ができています。7日間、カード登録なしで試せます。