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オンライン商談の録音を証拠として残すとき、条文が求めているもの

2026年10月12日

机の上の録音機から線が2本出ていて、1本は手前の開いた引き出しの中へ、もう1本は机の向かいの空いた椅子へ伸びている
机の上の録音機から線が2本出ていて、1本は手前の開いた引き出しの中へ、もう1本は机の向かいの空いた椅子へ伸びている

商談の録音について調べると、「当事者が録ること自体は違法ではない」「ただし許可を取るのが無難」までは、どのページにも書いてあります。そこから先が空いています。残した録音が、あとから何として扱われるのかに触れたページが見つかりません。

この記事では、民事訴訟法の条文が録音をどこに置いているかを読みます。読むと、録音を「証拠として残す」と決めた時点で、自分の側に何が返ってくるのかが分かります。


この記事の内容
  1. 「違法ではない」は、残したあとのことを何も決めていない
  2. 条文は「録音テープ」を名指しで書いている
  3. 一度引用すると、出す・出さないを選べなくなる
  4. 出さないと、相手の言い分が真実と認められる道がある
  5. 音のままでは出せない。必ず言葉にする作業が挟まる
  6. 録音ファイルは「物件」なのか
  7. うちは、保存した議事録を上書きしない
  8. 確かめられなかったこと

「違法ではない」は、残したあとのことを何も決めていない

録ってよいかどうかと、残したものがどう扱われるかは、別の話です。許可の取り方と、断られたときのその場の運び方は別の記事に書きました。

ここでは、録音がすでに手元にある状態から始めます。上位の記事が答えているのは「録ってよいか」までで、残したあとに何を求められるかは、条文の側に書いてあります。

条文は「録音テープ」を名指しで書いている

民事訴訟法の第231条です(e-Gov 法令検索)。

> この節の規定は、図面、写真、録音テープ、ビデオテープその他の情報を表すために作成された物件で文書でないものについて準用する。

「この節」は書証の節で、第219条から第231条までです。録音は、文書そのものではないけれど、文書と同じ規定を当てる枠に入れられています。 独立した扱いが用意されているわけではありません。

その第219条はこう書いています。

> 書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。

道は2本だけです。自分で出すか、持っている相手に出させるか。 録音はこの2本のどちらかに乗ります。

一度引用すると、出す・出さないを選べなくなる

第220条の第1項です。

> 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。 > 一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。

第1号だけで、商談の録音はほぼ当たります。「あのときの録音があります」と一度持ち出せば、それは引用で、持っているのは自分です。都合のいい部分だけ出して、残りを手元に置くことはできなくなります。

録音は、始まりから終わりまで1本につながっています。紙の書類と違って、必要な1枚だけ抜き出して出すという形になっていません。ここが録音特有の重さです。

出さないと、相手の言い分が真実と認められる道がある

第224条です。

> 当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。

第2項が続きます。

> 当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする。

条文が、消した場合も同じだと自分で書いています。 「あとで消せばいい」と思って残した録音は、消したこと自体が自分に返ってくる道を持っています。

出さないという選択が、何も起きない選択ではない。ここが、録音を残すと決める前に知っておく一点です。

音のままでは出せない。必ず言葉にする作業が挟まる

第221条の第1項は、文書提出命令の申立てで明らかにしなければならない事項を5つ並べています。

> 一 文書の表示 > 二 文書の趣旨 > 三 文書の所持者 > 四 証明すべき事実 > 五 文書の提出義務の原因

録音に読み替えると、「表示」はどの録音か、「趣旨」はそこに何が記録されているかです。2つ目は、音のままでは書けません。 2時間の音声ファイルがあるという事実だけでは、何が記録されているのかを示せないからです。

さらに第228条の第1項があります。

> 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。

出す側が、それが本物であることを示す側に立ちます。紙の押印にある推定が電磁的記録では1つだけ外されている話は、別の記事に書きました。

録音ファイルは「物件」なのか

第231条が並べているのは「録音テープ、ビデオテープその他の情報を表すために作成された物件」です。サーバーに置かれたファイルを物件と呼べるのかは、条文を読んだだけでは決まりません。

令和4年の改正で、電磁的記録のための条文が別に置かれ、2026年5月21日に全面施行されました。そちらでも第220条から第228条までが準用されています(条文そのものはこちらに引いてあります)。

どちらの条文に乗っても、提出の義務と、出さなかったときの効果は同じように付いてきます。 自分のファイルがどちらに当たるかを先に確かめなくても、残すと決めた時点の重さは変わりません。

うちは、保存した議事録を上書きしない

左は新しい紙をトレーに入れると下にあった紙が押し出されて落ちていく図、右は棚の段ごとに紙が1枚ずつ収まり、どれも残っている図
左は新しい紙をトレーに入れると下にあった紙が押し出されて落ちていく図、右は棚の段ごとに紙が1枚ずつ収まり、どれも残っている図

ここまでが条文の話です。道具の側で、自分たちが1つ決めたことを書きます。

Meetnectは、商談が終わると議事録をファイルにして保存します。同じルームを何度も使うと、議事録も何本もできます。このとき最新のものだけを持つ作りにしませんでした。 データベースの定義に、理由をそのまま書いてあります(schema.sql:59-70)。

> ルームごとの成果物の履歴(議事録・ボードPDF)。rooms.minutes_link/board_link は「最新」だけを持つので、同じルームを使い回したときに過去の議事録が消えないよう、保存のたびにここへ1行追加する。

この履歴の表には、created_by(保存した人)と created_at(保存した時刻)の列があります。保存するたびに1行増えるだけで、既にある行を書き換える処理を1つも置いていません(src/worker.js の room_files への INSERT は2か所、UPDATE と DELETE は0か所)。

なぜそうしたか。あとから「これがその日の議事録です」と言う場面を考えると、1つの枠を上書きしていく作りでは、前に何があったのかを誰も説明できないからです。第228条第1項が出す側に求めているのは、まさにそこです。

議事録の中身を要約と文字起こし全文の1ファイルにしてある理由はこちら、末尾の日時を人ではなく機械が押している理由はこちらに書きました。

確かめられなかったこと

ここに書いたのは条文の読み方で、裁判の結果を決めるものではありません。実際に争いになっているなら、弁護士に条文ごと見せてください。


Meetnectはブラウザだけで動くオンライン商談ツールです。商談が終わると、要約と文字起こしをまとめた議事録が1ファイルになり、保存するたびに履歴へ1行積まれます。前の議事録は上書きされないので、あとから「どれが、いつ保存されたものか」をたどれます。

商談しながら、議事録ができています

Meetnect はブラウザだけで動くオンライン商談ツールです。相手は登録不要、URLを開くだけ。通話中に文字起こしが進み、終わった時点で「誰が何を言ったか」まで残った議事録ができています。7日間、カード登録なしで試せます。