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商談資料のフォントと商用利用。画面に映すのと送るのは別のライセンス

2026年10月10日

オフィスの机に置かれたノートPCの画面に書類が3枚重なって映っている。画面から右へ太い矢印が3本伸び、黄色は紙を積み上げた束へ、オレンジは閉じた封筒へ、緑は4段重ねのサーバー機へ向かっている。机の手前には書類が1枚、表を上にして置かれている
オフィスの机に置かれたノートPCの画面に書類が3枚重なって映っている。画面から右へ太い矢印が3本伸び、黄色は紙を積み上げた束へ、オレンジは閉じた封筒へ、緑は4段重ねのサーバー機へ向かっている。机の手前には書類が1枚、表を上にして置かれている

商談で使う資料に、きれいな書体を使いたい。商用利用していいのか調べると、「このフォントは商用OK」という一覧が並びます。読んでも、肝心のところが分かりません。オンライン商談で画面に映すのは、その一覧の「商用利用」に入るのか。資料のファイルを相手に送るのは、同じ扱いなのか。

公式のライセンス文面とOpenTypeの仕様を当たると、答えははっきりしていました。ライセンスが見ているのは書体ではなく、こちらがする行為です。 映す・送る・サーバーに置くで、当たる決まりが別々に立っています。そして送るほうは、フォントファイルの中に書き込まれた数字が可否を決めています。確かめた文面をそのまま載せます。

この記事の内容
  1. 上位に並ぶのは「どのフォントが商用OKか」の一覧
  2. ライセンスが見ているのは、書体ではなく行為
  3. 埋め込んでいいかは、フォントファイルの中の数字が決めている
  4. 1書体混ざると、資料全体が読み取り専用になる
  5. 無料だから安心、有料だから手続きが要る、でもない
  6. うちはこう作った。フォントファイルを1つも持っていない
  7. 確かめられなかったこと
  8. Meetnectでは

上位に並ぶのは「どのフォントが商用OKか」の一覧

「商談資料 フォント 商用利用 ライセンス」で検索すると、上位10件はほぼ2種類です。商用利用できるフリーフォントのまとめと、プレゼン資料に向く書体の選び方。もうひとつ多いのが、別のPCで開いたときにレイアウトが崩れるのを防ぐ埋め込みの手順です。

書いてあることは、どれもその範囲では正確です。ただ、答えているのは「使えるか」で、「どの行為まで使えるか」ではありません。

ひとつ、気になる書き方がありました。上位の中に「PDFに書き出せばフォントが画像として固定されるので、受け取る側の環境に一切依存しない」という説明がありました。依存しなくなるのは本当ですが、理由が違います。 PDFに書き出したとき、文字は画像になっているのではなく、フォントのデータが文書の中に運ばれています。この記事の後半で、その証拠を公式の文面から出します。

ライセンスが見ているのは、書体ではなく行為

マイクロソフトは、Windowsに付属する書体の扱いをFAQとして公開しています。この文書が親切なのは、行為ごとに答えが並んでいるところです。

まず、印刷したものについて。

> Unless you are using an application that is specifically licensed for home, student, or non-commercial use, we do not place any restrictions on what you do with print output that uses these fonts.

(家庭用・学生用・非商用に限定されたアプリを使っていない限り、これらの書体を使った印刷出力をどうするかに制限は置かない、という意味です)

次に、画像ファイルについて。

> We view creating graphic files as being essentially the same as printing from an output device.

画像ファイルを作ることは、出力機器から印刷するのと本質的に同じと見る。 そして、そのすぐ下に動画の話があります。

> We view this as the same as graphic files, providing the captions or text is rendered as a bitmap image, and the font files themselves are not embedded within the video file.

条件が2つ書かれています。文字がビットマップ画像として描かれていること。フォントファイル自体が動画ファイルに埋め込まれていないこと(Microsoft・Font redistribution FAQ)。

オンライン商談の画面共有は、この条件にそのまま当てはまります。相手の画面に届いているのは映像で、文字はピクセルとして描かれていて、フォントファイルは乗っていません。映すことは、印刷と同じ側に置かれています。

反対の端も、同じFAQに書かれています。

> Apart from the document embedding rights described previously, you may not redistribute the Windows fonts. You may not copy them to other computers or servers, and you may not convert them to other formats, including bitmap formats, or modify them.

他のコンピューターやサーバーにコピーしてはいけない。ウェブの節では、書体をウェブサーバーに置く「セルフホスティング」とWOFF形式への変換が、どちらもできないこととして名指しされています。

印刷と同じ扱いの「映す」と、禁止されている「サーバーに置く」。この2つの間に、もうひとつ別の枠があります。

> Although the redistribution of fonts supplied with Windows is generally not allowed, "document font embedding" is a special case which is allowed in some circumstances.

文書へのフォント埋め込みは、再配布の禁止に対する例外として、条件つきで認められている。 商談資料をファイルで送る行為は、この3つ目の枠に入ります。

埋め込んでいいかは、フォントファイルの中の数字が決めている

ここが、この話でいちばん意外なところでした。埋め込みの可否は、契約書を読んで人が判断するものではありません。フォントファイルの中に数字として書き込まれていて、アプリがそれを読んで動いています。

OpenTypeの仕様書に、OS/2テーブルのfsTypeという項目があります。値は4つです。

> 0: Installable embedding: the font may be embedded, and may be permanently installed for use on a remote systems, or for use by other users.

> 2: Restricted License embedding: the font must not be modified, embedded or exchanged in any manner without first obtaining explicit permission of the legal owner.

> 4: Preview & Print embedding: the font may be embedded, and may be temporarily loaded on other systems for purposes of viewing or printing the document. Documents containing Preview & Print fonts must be opened "read-only"; no edits may be applied to the document.

> 8: Editable embedding: the font may be embedded, and may be temporarily loaded on other systems. As with Preview & Print embedding, documents containing Editable fonts may be opened for reading. In addition, editing is permitted, including ability to format new text using the embedded font, and changes may be saved.

0が無条件、2が禁止、4が閲覧と印刷だけ(文書は読み取り専用で開かれる)、8が編集まで可。さらに別のビットが2つあります。

> No subsetting: When this bit is set, the font must not be subsetted prior to embedding.

> Bitmap embedding only: When this bit is set, only bitmaps contained in the font may be embedded. No outline data may be embedded. If there are no bitmaps available in the font, then the font is considered unembeddable and the embedding services will fail.

そして注記にこうあります。

> Embedding licensing rights are granted by the vendor of the font. Applications that implement support for font embedding must not embed fonts which are not licensed to permit embedding. Also, when embedding a font into a document, applications must not modify the embedding permissions and restrictions indicated in this field.

> applications loading embedded fonts for temporary use (Preview & Print or Editable embedding) must delete the fonts when the document containing the embedded font is closed.

(Microsoft・OpenType仕様 OS/2テーブル)

ここで、さきほどの「PDFにすれば画像になる」が崩れます。埋め込まれた書体を、相手のアプリが文書を閉じるときに削除しなければならないと仕様が書いています。削除するものがあるということは、フォントのデータがそこに在るということです。「outline data」を埋め込んでよいかどうかというビットが用意されているのも同じ理由で、通常の埋め込みで運ばれているのは文字の輪郭データです。画像ではありません。

1書体混ざると、資料全体が読み取り専用になる

この数字は、PowerPointやWordの保存オプションの裏で動いています。マイクロソフトのサポートページは、同じことを利用者の言葉で書いています。

> Not all TrueType fonts can be embedded. Font creators can set different options for their fonts, including: Non-embeddable, Preview/Print, Editable, and Installable.

(Microsoft・Embed fonts in documents or presentations)

日本語のPublisherのページでは、この状態を画面に表示する仕組みまで説明されています。「埋め込み可能」「プレビュー専用」「埋め込み不可」の3つで、プレビュー専用はこう書かれています。

> このフォントは埋め込むことができますが、別のコンピューターで文書を編集した場合、それらの変更を保存することはできません

(Microsoft・フォント ライセンスの制限について)

ここで、実務で詰まるところが出ます。資料には複数の書体が混ざります。見出しに有料の書体、本文にOS付属の書体、図の中に別のもの。それぞれのfsTypeが違っていたら、どうなるか。最初のFAQに、その質問と答えがそのまま載っています。

> What if I embed "print and preview" fonts and "editable" fonts in the same document, can I only edit the parts that use the editable embedding fonts? > No, the specification requires that the whole document be locked for editing.

部分ではありません。文書全体が編集できなくなります。 1書体でも「プレビュー専用」が混ざっていれば、受け取った相手は資料を直せません。相手が代理店で、価格だけ差し替えて自社の客に出す予定だったとしたら、そこで止まります。

資料を送る前に確かめるのは「商用利用できる書体か」ではなく、「その資料に混ざっている書体のうち、いちばん厳しいものはどれか」です。

左に青・黄・赤の3枚の書類が重なっていて、灰色の矢印で中央の白い書類1枚にまとまっている。その書類から右へ色の違う矢印が4本伸び、それぞれの先に錠前が1つずつ丸く囲まれて置かれている。閉じた錠、赤い斜線が引かれた錠、つるが外れて開いた錠、鍵穴だけの錠の4つ
左に青・黄・赤の3枚の書類が重なっていて、灰色の矢印で中央の白い書類1枚にまとまっている。その書類から右へ色の違う矢印が4本伸び、それぞれの先に錠前が1つずつ丸く囲まれて置かれている。閉じた錠、赤い斜線が引かれた錠、つるが外れて開いた錠、鍵穴だけの錠の4つ

無料だから安心、有料だから手続きが要る、でもない

ここも思っていたのと逆でした。

Google Fontsなどで配られている書体の多くが使っているSIL Open Font Licenseは、許諾する行為を動詞で並べています。

> Permission is hereby granted, free of charge, to any person obtaining a copy of the Font Software, to use, study, copy, merge, embed, modify, redistribute, and sell modified and unmodified copies of the Font Software, subject to the following conditions:

embed(埋め込む)が、最初から動詞のリストに入っています。 さらに、作った文書については縛りを外しています。

> The requirement for fonts to remain under this license does not apply to any document created using the fonts or their derivatives.

禁じられているのは1つだけです。

> Neither the Font Software nor any of its individual components, in Original or Modified Versions, may be sold by itself.

フォントそのものを単体で売ることだけ(SIL Open Font License 公式テキスト)。資料に埋め込んで相手に送るのは、このライセンスでは最初から許諾の中に入っています。

では有料の書体はどうか。モリサワの商業利用のページには、こう書かれています。

> モリサワがライセンスするフォントを商業利用する場合、そのフォント製品のエンドユーザライセンス契約の範囲内であれば、別途、追加の使用許諾料や特別な契約の締結は必要ございません。

フォントを埋め込んだPDFをホームページに載せて見てもらう、ダウンロードしてもらうという例に対しても「問題ありません」と答えています。追加の手続きは要りません。

そのうえで、契約が終わったあとの話に1行あります。

> 機器にインストールされた当該フォントデータ無しにその表示および出力が可能な形式によるもの、または、紙もしくはフイルムなどの媒体に出力された成果物である場合には、契約終了後でも使用出来ます。

(モリサワ・商業利用について)

契約が切れたあとも残るのは、「そのフォントデータが入っていない状態でも表示と出力ができる形」になったものだけです。 画面に映した映像、紙に刷ったもの、画像にしたもの。ここでも、行為と形で線が引かれています。

無料と有料で分かれてはいませんでした。分かれているのは、こちらが何をするかです。そして最初のFAQは、無料のものについて一度だけ注意を書いています。

> Some font foundries may give away "free" versions of fonts with limited licenses and make their money selling extended rights.

> Some font licenses may restrict commercial use, require attribution, and restrict redistribution or commercial redistribution of documents that include embedded versions of the font.

埋め込んだ文書を商業的に配ることを制限しているライセンスも在ると、はっきり書かれています。一覧の「商用OK」だけを見て決めるには足りません。

うちはこう作った。フォントファイルを1つも持っていない

Meetnectを作るときに決めたことが1つあります。フォントのファイルを自分たちで持たない。

数えました。public/の8ファイルに@font-faceは0件。リポジトリ全体に.woff・.woff2・.ttf・.otfのファイルは0件です。使っているのは2通りだけで、ひとつがGoogle Fonts経由の読み込み(public/room.html:10など5ファイル)。もうひとつが、CSSのフォントスタックでOSの書体を名前で呼ぶことです。

--font:-apple-system,BlinkMacSystemFont,"Inter","Segoe UI","Noto Sans JP","Hiragino Kaku Gothic ProN",sans-serif;

(public/room.html:16)

Segoe UIはWindowsの書体で、Hiragino Kaku Gothic ProNはmacOSの書体です。うちはどちらのライセンスも持っていません。それで問題がないことは、同じFAQが理由まで書いています。

> In fact, as a web page creator you don't even need to be a Windows licensee to include a Windows font name in a CSS font stack, as the "use" of the font occurs on the Windows device, not on your web server.

書体を使っているのはWindowsの端末のほうで、ウェブサーバーのほうではない。 CSSに名前を書くことは使用ではない、とマイクロソフトが自分で書いています。だから名前で呼ぶのは続け、ファイルは1つも置かないことにしました。

資料についても同じ側に寄せてあります。PDFを開くときは、提示する側のブラウザの中でpdf.jsが読み込み(public/room.html:1893)、canvasに描いて(同1914行)、その絵を映像として送ります。相手の端末に資料のファイルは落ちません。この作りの詳しいところは共有したファイルがいつまで見られるかの記事に書いたので、ここでは繰り返しません。フォントの話にとっての意味はひとつで、こちらは新しい埋め込み文書を1つも作っていないということです。

いちばんはっきり出ているのが、ホワイトボードの書き出しです。ボードに書いた文字は、canvasにfillTextで描いています(public/room.html:2849・2859行)。描いた瞬間にピクセルになります。そのcanvasを1ページ1枚のJPEGにして(同2789行・品質0.85)、PDFを手で組み立てています。1ページあたりの中身は1行です。

const content=W+" 0 0 "+H+" 0 0 cm /Im0 Do";

(public/room.html:2758)

画像オブジェクトを1枚置くだけ。画像の指定は/Subtype /Imageと/Filter /DCTDecode(同2760行)で、JPEGがそのまま入っています。room.html全体で/Fontは0件、/BaseFontは0件、文字を描くPDFの命令も0件です(grep -cで確認しました)。書き出したPDFに、フォントのデータは1バイトも入りません。

作らなかったものも書いておきます。資料のPDFを作り直して配る機能を付けていません。 付けると、埋め込んでいいかどうかの判断を、相手の資料に混ざった書体について私たちがすることになります。さきほどのfsTypeを読んで、4なら読み取り専用にして、2なら止める。それは資料を預かる側がやることではないと考えました。映すだけなら、その判断がそもそも発生しません。

確かめられなかったこと

Adobe Fontsの条項は、公式のヘルプページを読めませんでした(アクセスが拒否されました)。要約記事は見つかりますが、この記事の決まりに従って、自分で文面を確かめられなかったものは引きません。Adobe Fontsを使っている資料については、ご自身で条項を確認してください。

それと、個別の書体について使っていいかどうかは、私たちには判断できません。 この記事で書けるのは、見るべき場所が「書体の名前」ではなく「行為」と「ファイルの中のfsType」だということまでです。手元の資料に混ざっている書体のfsTypeは、PowerPointやWordの埋め込みの画面が教えてくれます。

Meetnectでは

Meetnectは、資料を提示する側の端末で描いて、映像として相手に送ります。相手にファイルは落ちず、こちらが新しい埋め込み文書を作ることもありません。ホワイトボードの書き出しも、各ページを画像にしてから1枚ずつ並べたPDFなので、フォントのデータが入りません。資料の体裁をそのまま見せたいだけなら、ファイルを渡さずに済ませられます。Meetnectは、登録なしで相手が参加できるオンライン商談のツールです。

関連:画面共有で動画を流すときの著作権、オンライン商談でBGMを流すとき、共有したファイルはいつまで見られるか

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Meetnect はブラウザだけで動くオンライン商談ツールです。相手は登録不要、URLを開くだけ。通話中に文字起こしが進み、終わった時点で「誰が何を言ったか」まで残った議事録ができています。7日間、カード登録なしで試せます。