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web会議で動画を画面共有するとき、著作権の線はどこに引かれているか

2026年10月10日

オフィスの机に置かれたノートPCの画面で動画が再生され、そこから青い矢印が2本伸びている。1本は同じ机の上にあるもう1台のノートPCへ、もう1本はレンガの壁を越えて建物の外にある別の机のノートPCへ届いている。手前の机には開いた本と金色の天秤が置かれている
オフィスの机に置かれたノートPCの画面で動画が再生され、そこから青い矢印が2本伸びている。1本は同じ机の上にあるもう1台のノートPCへ、もう1本はレンガの壁を越えて建物の外にある別の机のノートPCへ届いている。手前の机には開いた本と金色の天秤が置かれている

商談中に、参考になる動画や記事を画面共有で見せたい。調べると「それは公衆送信にあたる」と書いてあります。では相手が1社だけの商談も同じなのか。著作権法を当たると、線は人数ではなく「相手が決まっているか」で引かれていました。 しかも同じ画を見せる行為が、相手が同じ建物にいるかどうかで別の条文になります。非営利・無料の例外も、送るほうには付いていません。条文とYouTubeの利用規約で確かめたことを書きます。出典は本文に置きます。

この記事の内容
  1. 上位が答えているのは「セミナーで流すとき」
  2. 条文は、人数で線を引いていない
  3. 相手が同じ建物にいるかどうかで、条文が変わる
  4. 非営利・無料の例外は、送るほうには付いていない
  5. 録画していると、流したものも一緒に複製される
  6. YouTubeの規約も「不特定または多数」で線を引いている
  7. 確かめられなかったこと
  8. 商談の前に決めておく3つ
  9. Meetnectの場合
  10. 参考

上位が答えているのは「セミナーで流すとき」

この言葉で検索して出てくるのは、ウェビナー・社内研修・オンライン授業の解説です。弁護士事務所の記事も、著作権の処理を代行する会社の記事も、前提にしているのは不特定多数に向けて流す場面です。説明としては正確で、読む価値もあります。

ただ、商談はその規模ではありません。相手は1社、多くて数人。見せるのは1回で、残しもしません。上位の記事は、その規模のときに条文をどう読むのかを書いていませんでした。

条文は、人数で線を引いていない

まず「公衆」の定義です。著作権法2条5項はこうなっています。

> この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。

変わった書き方です。読むと2段になっていることが分かります。もともと「公衆」が指しているのは相手が決まっていない人たちで、この項はそこに「特定かつ多数」を足しています(e-Gov 法令検索・著作権法2条)。

つまり、相手が決まっていなければ人数が少なくても公衆に入り、相手が決まっていても多数なら公衆に入ります。 商談で相手が決まっていて数人なら、この定義からは外れます。ウェビナーで申し込んだ人だけに配信する場合は、相手は決まっていても多数なので入ります。

では何人から「多数」なのか。条文には書かれていません。 ここは数字で線が引かれていない場所です。

相手が同じ建物にいるかどうかで、条文が変わる

もうひとつ、気づきにくい括弧書きがあります。公衆送信の定義(2条1項7号の2)は、送信のうち次のものを除くと書いています。

> 電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。

同じ構内の設備どうしで送っているものは、公衆送信の定義から外れます。社内の会議室のモニターに同じ建物のサーバーから映すのと、外にいる相手のブラウザへ送るのは、条文の上で別のことになります。 見せている中身も、こちらの操作も同じなのに、相手がどこにいるかで変わります。

送信そのものの権利は23条にあります。「著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する」。続く2項は「公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する」(同・23条)。送る側と、受けて見せる側で、別々に権利が立っています。

非営利・無料の例外は、送るほうには付いていない

「非営利なら流せる」という話を聞いたことがあるなら、それは38条1項です。

> 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。

許されている行為が4つ並んでいます。上演、演奏、上映、口述。公衆送信は入っていません。 同じ条の2項と3項には自動公衆送信が出てきますが、どちらも放送された著作物を有線放送したり受信装置で伝えたりする場合に限られています(同・38条)。

ここが実務に効きます。会議室でみんなに見せる(上映)には例外の条文があるのに、遠くの相手に送るほうには同じ例外が置かれていません。 しかも商談は営利目的なので、38条1項の入り口にも立てません。「社内の勉強会では流していた」は、オンラインの商談にそのまま持ってこられません。

左右に分かれた図。左は同じ部屋の中で1台のモニターを3人が並んで覗き込んでいて、足もとに緑の円いラグが敷かれている。右はレンガの壁を越えて青い矢印が伸び、その先には誰も座っていない机とモニターがあり、灰色の円いラグの手前に鍵のかかった南京錠が置かれている
左右に分かれた図。左は同じ部屋の中で1台のモニターを3人が並んで覗き込んでいて、足もとに緑の円いラグが敷かれている。右はレンガの壁を越えて青い矢印が伸び、その先には誰も座っていない机とモニターがあり、灰色の円いラグの手前に鍵のかかった南京錠が置かれている

録画していると、流したものも一緒に複製される

商談を録画しながら画面共有で動画を流すと、録画ファイルの中にその動画が入ります。複製のほうにも例外の条文があって、30条1項がそれです。

> 著作権の目的となつている著作物(中略)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

書かれているのは「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」です(同・30条)。商談の録画を社内で共有する使い方は、ここには見当たりません。流すことと、残すことは、別の条文で見る必要があります。 録画した議事録や動画をいつまで持つかは商談の議事録の保存期間に書きました。

YouTubeの規約も「不特定または多数」で線を引いている

法令とは別に、使っているサービスの規約があります。YouTubeの利用規約(日本語版)には、やってはいけないこととしてこう書かれています。

> 本サービスを個人的、非営利的な用途以外でコンテンツを視聴するために利用すること(たとえば、不特定または多数の人のために、本サービスの動画を上映したり、音楽をストリーミングしたりすることはできません)。

同じページには「お客様は個人的で、非営利目的の用途でコンテンツを視聴できます」ともあります(YouTube 利用規約)。

注目したいのは語です。「不特定または多数」。著作権法2条5項と同じ切り方で書かれています。規約のほうも、人数だけでは線を引いていません。ただし、商談で1社に見せることが「個人的、非営利的な用途」に入るのかは、この文面からは読み取れません。営利の商談である以上、入ると読むのは難しいところです。

確かめられなかったこと

商談の前に決めておく3つ

  1. 見せたい中身を、自分の資料に作り替える。 他社の記事や動画をそのまま出すより、要点を自分の言葉と図に置き直したほうが、商談としても速く通じます。作り替えたものなら、送信するかどうかの話が消えます
  2. URLを渡して、相手の手元で開いてもらう。 相手が自分で再生する形なら、こちらから送ってはいません。渡したリンクがいつまで開けるかは別の話で、招待URLの期限に書きました
  3. 録画を止めてから流す。 流すだけなら送信の話で済みますが、録画に入ると複製の話が足されます。止めると押し直しで別のファイルになる点は録画の一時停止と停止の違いに書きました

Meetnectの場合

Meetnectにも画面共有はあります(public/room.html:1825 で getDisplayMedia を呼んでいます)。資料のほうは別の作りで、資料を描いたキャンバスから映像を取り出して通話の映像として送っています(public/room.html:1901)。相手に届くのはどちらも映像で、送信していること自体は変わりません。 出していいものかを確かめる仕組みは、1つも入れていません。判断するのは出す側です。

参考

商談しながら、議事録ができています

Meetnect はブラウザだけで動くオンライン商談ツールです。相手は登録不要、URLを開くだけ。通話中に文字起こしが進み、終わった時点で「誰が何を言ったか」まで残った議事録ができています。7日間、カード登録なしで試せます。