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web会議の資料に他社のロゴを載せる|商標と著作権で見る場所が違う

2026年10月11日

カードに描かれた青い四角のマークから青い矢印が2本伸び、1本は飲料パックと呼び鈴を並べた棚へ、もう1本は同じ四角を拡大している虫めがねへ向かっている
カードに描かれた青い四角のマークから青い矢印が2本伸び、1本は飲料パックと呼び鈴を並べた棚へ、もう1本は同じ四角を拡大している虫めがねへ向かっている

導入実績や取引先の紹介で、他社のロゴを資料に並べる。その資料をweb会議の画面共有で相手に出す。この行為を調べると、出てくるのは「必ず許可を取りましょう」で終わる記事ばかりです。それは正しいのですが、許可が取れなかったときや、どこまでが危ないのかを知りたいときには足りません。

この記事では、商標権がそもそも何に付いているのかを、特許庁の説明と商標法の条文から確かめます。先に書くと、商標権はロゴ単体には付いていません。 見ているのはロゴと商品・サービスの組合せで、著作権はまったく別のところを見ています。


この記事の内容
  1. 上位が答えているのは「許可の取り方」まで
  2. 商標権は、ロゴ単体には付いていない
  3. 条文は「画面に出す」行為を名前つきで拾っている
  4. それでも効力が及ばない、と別の条文が書いている
  5. 著作権は、同じロゴの別のところを見ている
  6. 確かめられなかったこと
  7. うちは、録画の絵に自社のマークを1枚も焼き込んでいません
  8. 商談の前に決めておく3つ
  9. Meetnectの場合
  10. 参考

上位が答えているのは「許可の取り方」まで

「web会議 他社のロゴ 資料に載せる」で検索して出てくるのは、導入企業ロゴの集め方、依頼メールの文面例、無断使用で法的措置を受けた事例、そしてバーチャル背景の記事です。許可を取るべきという結論はどれも同じで、そのとおりだと思います。

ただ、そこに添えられている理由はほとんどが「ロゴは商標登録されているから、無断使用は商標権侵害になる」の一行でした。商標権が何と何の組合せに付いているのかを書いた記事は、見た範囲で1件もありませんでした。 ここが空いているので、そこだけを書きます。

商標権は、ロゴ単体には付いていない

特許庁が自分のサイトでそう書いています。

> 商標権が、商標(マーク)とそれを使用する商品・役務(サービス)との組合せから構成され、指定商品・指定役務が商標の権利範囲を定めるものとなるからです。 > (特許庁「商品・役務を指定する際の御注意」)

条文も同じ形です。商標法25条は「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。」と書いています(商標法25条)。侵害とみなす行為を並べた37条1号も、「指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用」から始まります(商標法37条)。どちらの条文も、ロゴだけを単独で守る書き方をしていません。

区分は第1類から第45類に分かれていて、同じ名前の商品でも中身で割れます。特許庁は「食品の展示会の企画・運営又は開催」を例に挙げて、販売促進のためのものは第35類、教育・文化のためのものは第41類だと書いています。材質で割れる例(植物の茎支持具は金属製なら第6類、それ以外は第20類)も並んでいます。

実務でこれが効くのは、「そのロゴが登録されているか」だけでは答えが出ないという点です。どの類で登録されているか、自分の資料がその商品・サービスの表示として使われているか、という2つ目と3つ目を見ないと、侵害かどうかの形になりません。登録の有無は特許庁が案内しているJ-PlatPatで調べられます。

条文は「画面に出す」行為を名前つきで拾っている

商標法2条3項は「この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。」と書いて、8つの行為を並べています(商標法2条)。この中の2つが、オンラインの商談の形にそのまま近いところにあります。

7号は「電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」です。画面にマークを出してサービスを提供する行為が、名前つきで「使用」に入っています。

8号はもっと近くて、「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」です。価格表と取引書類は、条文が自分で挙げています。 営業資料はたいていこのどちらかの形をしていて、画面共有は「電磁的方法により提供」の文言の中にあります。紙に刷っていないから使用にならない、という読み方は条文の文言からは出てきません。

それでも効力が及ばない、と別の条文が書いている

同じ商標法の26条1項に、商標権の効力が及ばない範囲が並んでいます。その6号がこれです。

> 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標 > (商標法26条)

読みにくい文ですが、意味は「そのマークを見た相手が、これは誰の商品・サービスだと受け取るような出方をしていないなら、商標権は届かない」ということです。特許庁は同じことを、こう説明しています。

> 商標権の効力を一律に及ぼすと円滑な経済活動に支障を来すおそれがある場合(例えば次のような場合)には商標権の効力は及びません > (特許庁「商標権の効力」)

そのページが具体例として挙げているのは2つだけです。自己の氏名・名称等を普通に用いられる方法で表示する場合と、商品・役務の普通名称や品質等を普通に用いられる方法で表示する場合。それ以外は「商標法第26条をご参照ください」で終わっていて、例は増やされていません。

実績として並べたロゴがこの6号に当たるかどうかは、特許庁のページには書かれていません。形だけ見れば、実績ロゴは相手の商品の出所を示すために貼るものではなく、自分の取引の事実を示すために貼るものです。ただ、そう読めるかどうかの判断は公式の説明の外にあります。

著作権は、同じロゴの別のところを見ている

商標権が見ているのは「マークと商品・サービスの組合せ」でした。著作権が見ているのは、その図形そのものです。どの類で登録されているかは関係がなく、誰が作ったか、創作性があるかという別の軸で判断されます。

つまり、同じ1つのロゴについて、2つの決まりがまったく別の場所を見ていることになります。商標の側が通っても著作権の側で引っかかる形も、その逆もありえます。画面共有や録画で他社の著作物を扱う話は別に書いたので、そちらに譲ります。

確かめられなかったこと

ノートパソコンの画面に出した資料から色違いの矢印が3本伸び、橙は書類の入った引き出し、黄は疑問符の札、緑は何も書かれていない白いボードへ向かっている
ノートパソコンの画面に出した資料から色違いの矢印が3本伸び、橙は書類の入った引き出し、黄は疑問符の札、緑は何も書かれていない白いボードへ向かっている

正直に書いておきます。

1つめ。画面共有が2条3項8号の「展示」「頒布」「電磁的方法により提供」のどれに当たるのかは、条文の文言からは決められませんでした。特許庁のページにもその切り分けは書かれていません。

2つめ。実績として並べたロゴが26条1項6号に当たるかどうかの公式の見解は見つかりませんでした。上に書いたとおり、特許庁が挙げている例は2つだけです。

3つめ。ロゴの図形に著作権が及ぶ範囲については、特許庁は何も書いていません。所管が違うので当然です。

うちは、録画の絵に自社のマークを1枚も焼き込んでいません

Meetnectの録画は、1280×720の描画面に毎フレーム絵を描いて動画にしています。描く中身は「相手の映像」「自分の映像」「資料」の3つだけです(public/room.html の2044〜2062行)。この描画のループに、文字や記号を描く処理は1つもありません。

room.html 全体で文字を描く処理は3か所あります。2か所はボードに置いた文字(2849行・2859行)、1か所は顔の計測値を開発中に出すためのもの(1659行)。録画の絵にはどれも入っていません。

付けなかった理由は、商標法2条3項7号の形そのものです。7号は「映像面に標章を表示して役務を提供する行為」を使用と呼んでいます。うちの映像面にうちのマークを出すのは自由ですが、その映像面には資料が出ている間ずっと相手の資料が全面で入っています(2050行)。そこへ自社のマークを重ねると、相手の資料を含んだ1本の映像に、うちの出所表示が乗った状態になります。録画のファイルは相手にも渡るので、乗せる理由が見つかりませんでした。

うちの名前を置いているのは1か所だけです。議事録ファイルの末尾に「作成: Meetnect / 日時」の1行を入れています(2498行)。これはテキストなので、要らなければ消せます。あとは退出したあとの画面に「この商談は Meetnect で行われました」という案内を1行出していますが(1982行)、これは映像ではなくページの上の文字です。

既定のバーチャル背景も同じ考えで作りました。用意してあるのは7枚で、名前はオフィス・明るいオフィス・会議室・書斎・グリーン・カフェ・ネイビー(483〜493行)。どれも場所か色で、マークを入れた既定背景は1枚も置いていません。 ロゴ入りの背景は各社が自分の画像を選んで使う形にしてあり(494行)、その画像をサーバーへ送る処理はありません(バーチャル背景のロゴが反転する?相手に届く向きと、切れない置き方 に書きました)。

資料そのものは、提示する側のブラウザが読んで描画面に描くだけで、うちが新しい文書を作って配り直すことはしていません。作り直す機能を付けると、資料に混ざった他社のマークの扱いをうちが代わりに決めることになります。そこはツールが引き受ける場所ではないと考えました。

商談の前に決めておく3つ

1. どの類で登録されているかを先に見る。 ロゴの画像を探す前に、J-PlatPatで登録の有無と類を調べます。自分の資料が、その類の商品・サービスの表示として読めるかどうかが、商標の側の分かれ目になります。

2. 許可をもらうときに「何の表示として載せるか」を書く。 掲載の目的・媒体・期間に加えて、出所を示すためではなく取引の事実を示すために載せる、と文面に書いておきます。26条1項6号が見ているのはその点です。

3. 画面に出すぶんも、許可の文面に入れる。 2条3項8号は「電磁的方法により提供」を名前で挙げています。紙の資料とWebサイトの許可だけを取って、画面共有を書き忘れる形が起きやすいところです。

Meetnectの場合

Meetnectはブラウザだけで動くオンライン商談ツールです。資料の提示と録画と議事録をひとまとめに持っていますが、この記事に出てくる描画の中身・文字を描いている3か所・既定背景の7枚は、すべて実装からそのまま書き出したものです。資料に載せるロゴの扱いそのものは、ツールが決められることではありません。

参考

商談しながら、議事録ができています

Meetnect はブラウザだけで動くオンライン商談ツールです。相手は登録不要、URLを開くだけ。通話中に文字起こしが進み、終わった時点で「誰が何を言ったか」まで残った議事録ができています。7日間、カード登録なしで試せます。