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web会議の背景ぼかしが重い理由と、設定ごとに増える処理の中身

2026年9月13日

カメラの映像が、明るさ補正・人物の切り抜き・顔の形の補正・録画と段階を経るごとに処理が積み上がっていく様子
カメラの映像が、明るさ補正・人物の切り抜き・顔の形の補正・録画と段階を経るごとに処理が積み上がっていく様子

背景ぼかしを入れると、ファンが回り、マウスが引っかかり、映像が遅れる。調べると「背景ぼかしを切る」「他のアプリを閉じる」「アプリを更新する」「再起動する」が並びます。どれも正しいのですが、どの設定が、何の処理を増やしているのかを書いた記事はありませんでした。だから「重い」と言われたとき、何を切ればいいかが分からず、全部切って暗い顔のまま商談をすることになります。

この記事では、まず背景ぼかしが重くなる理由を短く書き、次に実務で詰まる3つ(何を切ればいいか分からない・全部切ると暗い・回線の問題と区別がつかない)を書きます。後半は、自分たちのツールで5つの設定がそれぞれ何の処理を足しているかを、実装のとおりに段階で並べます。CPUの使用率は測っていないので、何%軽くなるかは書きません。どの設定がどの段を動かすか、という事実だけを書きます。


この記事の内容
  1. 重いのは回線ではなく、自分のPCの中です
  2. 実務で詰まるのは、この3つです
  3. うちは、設定ごとに増える処理を5段に分けて作りました
  4. 切る順番は、3段→2段。1段は残してかまいません
  5. 送る映像は変わらないので、回線は変わりません
  6. 測っていないことは書きません

重いのは回線ではなく、自分のPCの中です

背景ぼかしは、カメラの1コマごとに「ここは人、ここは背景」を推定し、背景だけをぼかして、人を上に重ねる処理です。カメラが毎秒30コマなら、この推定と合成を毎秒30回やります。映像の処理の中でも、人と背景を分ける推定がいちばん重く、会議アプリの機能の中で負担が目立ちやすいものです(出典)。

この処理は、映像を相手に送る前に、自分のPCの中で終わります。送る映像の大きさとコマ数が同じなら、背景ぼかしを入れても切っても、回線に乗る量は変わりません。重いのは回線ではなく、自分のPCです。 ここを混同すると、回線を調べて何も見つからない、ということになります。

実務で詰まるのは、この3つです

1. 「重い」と言われても、何を切ればいいか分からない

背景・明るさ・美肌・ズームと設定が増えるほど、どれが重いのかが分からなくなります。会議アプリの設定画面は、各項目が何の処理を動かすかを書いていません。結果として、切る順番が決められず、全部切ることになります。

2. 全部切ると、暗い顔のまま商談をすることになる

重いから全部切る、は一つの手です。ただ、背景ぼかしと明るさ補正が同じ重さなら全部切ってよいのですが、同じではありません。軽い設定まで切ると、逆光で顔が暗いまま相手に届きます。重い設定と軽い設定を分けて、重いほうだけ切るのが本来の対処です。分けるには、それぞれが何をしているかを知る必要があります。

3. 映像が遅れたとき、回線のせいかPCのせいか区別がつかない

背景処理が追いつかないと、映像のコマが落ちて遅れて見えます。回線が細いときも同じように見えます。見た目では区別がつかないので、まず背景を切って変わるかを見るのが早いのですが、「背景を切れば切り分けになる」と知っていないと、回線のほうを先に調べることになります。

うちは、設定ごとに増える処理を5段に分けて作りました

Meetnect の商談画面の「カメラ・マイク設定」には、背景・明るさ補正・美顔モード・ズームの4つがあり、別に録画があります。これらが何の処理を足すかを、実装のとおりに段階で並べます。

カメラの生映像を0段として、明るさ補正・ズーム、背景・美肌、美顔モードの形の補正、録画が、それぞれ別の処理を足していく5段の積み上げ
カメラの生映像を0段として、明るさ補正・ズーム、背景・美肌、美顔モードの形の補正、録画が、それぞれ別の処理を足していく5段の積み上げ

0段:全部オフ。 カメラの映像をそのまま相手に送ります。描き直すための描画面を作らず、推定も回しません。カメラの映像トラックが、そのまま送信に繋がっている状態です。

1段:明るさ補正、またはズームだけ。 カメラの1コマを描画面に1回描き直すだけです。明るさ補正はブラウザの描画フィルタ(明るさ・コントラスト・彩度)を掛けて描く、ズームは中央を切り抜いて引き伸ばして描く、のどちらも1回の描画です。人と背景を分ける推定は動きません。 明るさの「自動」は、0.7秒ごとに32×18に縮めた絵の平均の明るさを測るだけで、これも推定ではありません。この段の中身は web会議で顔が暗いときに確かめる順番 と 顔が小さい時のカメラのズーム に書きました。

2段:背景(ぼかし・画像)、または美顔モード。 ここで推定が入ります。毎コマ、Google の MediaPipe の人物分割モデル(selfie_multiclass、256×256)に絵を渡して、人の範囲を受け取ります。渡す絵は、前のコマの結果から「人が写っている四角」を切り出し、512×512の正方形に収めたものです。受け取った範囲は、そのままでは境目が粗いので、カメラの絵を手がかりに輪郭へ寄せる処理を WebGL で掛けます(幅960までに縮めて処理)。そのあと背景を描き、人を重ねます。背景が「ぼかし」のときは、毎コマ、カメラの絵の全面に12pxのぼかしを掛けて描きます。背景が「画像」のときは、最初に1回だけ画像を描画面と同じ大きさに焼き込んでおき、毎コマはその板を描くだけです。画像を毎コマ直接描くと、負荷が高いときに最初の描画が落ちて背景が透明になることがあったので、板にしました。

推定は GPU で動かすことを先に試し、動かなければ CPU に切り替えます。どちらで動いているかで重さは変わりますが、どちらにしても「1段」には無かった仕事が毎コマ1回増えるのが、この段です。切り抜きの精度の話は web会議の背景ぼかしの精度が上がらない理由 に書きました。

3段:美顔モード。 2段の推定に加えて、顔の468点の位置を取るモデル(FaceMesh)を毎コマ動かし、その点を使って合成した絵を WebGL で歪ませます(小顔・目・鼻・頭の形の補正)。美肌は、2段で作った人物の層をぼかしたものを半透明で1枚重ねる処理なので、描画が1回増えるだけです。形の補正のほうが、モデルが1つ増える分、重いほうです。美顔モードは「ナチュラル」「しっかり」のどちらを選んでも、美肌と形の補正の両方が動きます。中身は 美肌補正は相手に見える? に書きました。

4段:録画。 背景とは別の仕事です。録画は、相手の映像・自分の映像・資料を1280×720の別の描画面に毎秒25コマで描き、800kbpsの映像として圧縮しています。背景ぼかしがオンでもオフでも、録画を始めればこの分は増えます。逆に、録画を止めても背景の重さは変わりません。録画の数字の根拠は web会議の録画容量は2時間でどれくらいか に書きました。

切る順番は、3段→2段。1段は残してかまいません

段で分けると、切る順番が決まります。

  1. 美顔モードを切る(3段)。顔の468点を取るモデルが止まります
  2. 背景を「なし」にする(2段)。人と背景を分ける推定が止まります
  3. 明るさ補正とズームは残す(1段)。推定を回さないので、ここを切っても減るのは描画1回分です

2段まで切ると、明るさ補正かズームが残っていれば1段の描画だけが動き、それも切ると0段に戻ります。0段では描画面そのものを捨てて、カメラの映像トラックを送信に直結し直します。「オフにしたつもりで裏で回り続ける」状態を作らないために、不要になった時点で描画面を止める作りにしました。

録画は、重さの都合で切るものではありません。商談の記録なので、録画を残して3段・2段を切るのが順番です。

送る映像は変わらないので、回線は変わりません

どの段にいても、相手に送る映像は1本で、大きさとコマ数は同じです。背景を入れると、カメラの映像トラックの代わりに描画面から取り出した映像トラックを送信に差し替えるだけで、送る解像度は変えていません。描画面から取り出すコマ数は毎秒30に揃えています。カメラが30コマなので、出力も30に合わせました。24にすると動きが2割飛ぶのが見えたからです。

だから、背景を切って軽くなったなら原因はPCで、切っても遅れが同じなら原因は回線か相手側です。背景のオンオフが、PCと回線の切り分けになります。 回線側の話は web会議の回線が不安定なときの対処 に書きました。

測っていないことは書きません

ここまでは、どの設定がどの処理を動かすかという、実装から読める事実です。各段が CPU を何%使うか、背景を切ると何%軽くなるかは測っていません。 GPU で動くときと CPU に落ちたときの差も測っていません。数字を出すには、同じPC・同じ照明・同じ距離で段ごとに測る必要があり、まだやっていないので書きません。「ぼかしと画像のどちらが軽いか」も、ぼかしが毎コマ全面のぼかし描画、画像が焼いた板の描画1回、という処理の違いは書けますが、実際の差は測ってから書きます。


Meetnect はブラウザだけで動くオンライン商談ツールです。背景・明るさ補正・美顔モード・ズーム・録画は、それぞれ別の段の処理として作っていて、全部オフのときはカメラの映像を描画面を通さずそのまま送ります。この記事の中身は実装からそのまま書き出したもので、処理の重さの数字は測っていないので載せていません。

商談しながら、議事録ができています

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